【劇評236】仁左衛門、玉三郎。『四谷怪談』は、観客を地獄へ連れて行く
急に秋雨前線が停滞して、底冷えのする天気となった。怪談狂言を観るには、いささか寒すぎるせいか、四世南北の描いた冷酷な世界が身に染みた。
今年の歌舞伎座は、仁左衛門、玉三郎の舞台姿が記憶されることになるだろう。
玉三郎に限って言えば、二月の『於染久松色読販』、三月の舞踊二題『雪』、『鐘ヶ岬』、四月、六月の『桜姫東文章』上下、そして今月の『東海道四谷怪談』と舞踊を交えつつも、孝玉の真髄を味わうことができた。
かつての孝夫、玉三郎時代の淫蕩な舞台を思い出す古老もいえれば、