【劇評175】現世の人の身の背後に、亡霊が。玉三郎の『口上 鷺娘』にこぼれる悲しみ。
一九八六年にアンドルー・ロイド・ウェバーによるミュージカル『オペラ座の怪人』が誕生した。ガストン・ルルーの小説を原作とした舞台は、世界を席巻した。才人、加納幸和は二○○一年に福島三郎との共同台本で、『かぶき座の怪人』という自由な翻案を作り上げたのを思い出す。
この九月、第四部に用意されていたのは、映像×舞踊 特別公演と副題がついた『口上 鷺娘』である。
襲名でも追善でもないから、「口上」は地方巡業でよく行われるようなご当地での挨拶と思っていた。
この予想は見事に裏切