【劇評205】二月大歌舞伎。魁春、歌舞伎座で久し振りの『十種香』を出す。松緑、巳之助の『泥棒と若殿』
二月大歌舞伎は、第一部『十種香』から。年表を見ても、松江から魁春となった平成十四年から今月まで、地方では出しているが、歌舞伎座で演じるのは、ずいぶん久し振りとなる。
前回との比較はさほど意味があるとは思えないが、父六代目歌右衛門の八重垣姫を写す姿勢は変わらない。ただ、型を写すことに徹して、自分を消し去る覚悟が見事で、派手さはないが、篤実な『十種香』となった。
花作り簑実は勝頼は、門之助。出から憂いに満ちて、この役は単に美男の役者をみるためにだけあるのではないとわかる