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『啄木の歌に思う』

かの旅の汽車の車掌が
ゆくりなくも
我が中学の友なりしかな

石川啄木

啄木は旅に出て汽車に乗った日のことを思い出している。
行き先も決めずに行った旅かもしれない。
その時の汽車の車掌が中学時代の友だった。
偶然の再会に温かな気持ちになった啄木。
「ああ、あいつも仕事がんばってるんだ。俺も頑張ろう」
と思ったことだろう。
仕事のこと、家族のこと、生活費のこと、短歌、文学、友だちのこと、好きだった女の人のことなどを思ったりしながら啄木は車窓を眺めていたのだろうなぁ。

私も近所の百均やコンビニに行くと仕事をがんばっている同級生に元気をもらったりする。
地元新聞や地元タウン誌などで同級生の活躍が載っているとうれしい。でも、ちょっと羨ましかったり。鳴門を離れて都会で活躍している子のことも思う。中学時代の友は大人になってから出会った人とはまたちがう特別な存在なのかもしれない。

『一握の砂』に収録されているこの歌を読んで中学時代のことをいろいろ思ったりした。

啄木が何処の街を旅をしたのか書かれていないところが効果的な歌で、読者が読者の心の中でいろんなことを描くことができる一首だ。

楠井花乃

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