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岩波文庫 虚子五句集下

好きだった句

いづくとも無く風花の生れ来て
初蝶来何色と問ふ黄と答ふ
大学は花に埋もれ日曜日
山の日は鏡の如し寒桜
下萌や石をうごかすはかりごと
豆の蔓月にさ迷ふ如くなり
怪談はゆうべでしまひ秋の立つ
昼寝してゐる間に蕎麦を打ちくれて
生姜湯に顔しかめけり風邪の神
やはらかき餅の如くに冬日かな
竹の皮日蔭日向と落ちにけり
ゆらぎ見ゆ百の椿が三百に
子規忌へと無月の海をわたりけり
賽の目の仮の運命よ絵双六
我庭の牡丹の花の盛衰記
ひしひしと玻璃戸に灯虫湖の家
欠伸せる口中に入る秋の山
野分跡倒れし木々も皆仏
コスモスの花あそびをる虚空かな
夏の蝶日かげ日なたと飛びにけり
粗末なる団扇の風を愛しけり
草原に蛇ゐる風の吹きにけり
天の川雨戸の外にかヽりけり
秋の蝶色を見せつヽとびにけり
ほのかなる空の匂ひや秋の晴
灯をともす掌にある春の闇

岩波文庫虚子五句集下

       ** * **

 勉強してないので、有名な句とか、よくわからないです。備忘録。
 麒麟先生が、岩波文庫下巻からのほうが読みやすいみたいなことをおっしゃったので、こちらから。
 大学の句は、田中裕明の「大学も・・・」というのが思い出されて、調べてみたり。
 生姜湯にしかめ面の風邪の神は、先生が蛇笏賞受賞予言されて絶賛された小澤實の句集『澤』のなかにあった、「風邪の神・・・」の句が。こちらは記憶力ゼロの私が『澤』を読んだときに一読で覚えた句だったので、風邪の神様ってそうなんだぁと、とても楽しくなりました。
 全体にとても、解き放たれたように自由。一応、上巻もパラパラとみたけど、なんとなぁく、窮屈な感じでした。特に戦中の句。
 なお、「下」には時々、とても、寂しく感じられる句も散見されます。
 先に載せさせていただいた、おしまいの『秋の晴』と『春の闇』は、とても好き。
『春の闇』では、麒麟先生の最新句集「鷗」の最後からふたつめ「・・・花見舟」の句が思い浮かんで、こちらもまた読み返しています。
 虚子という名は、大きすぎて少し敬遠というか、別件もありちょっと背を向けていたのですが意外に、実は読んで楽しかったのでした。

             




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