【モノローグエッセイ】アゲハ蝶の叔父
訳あって、チェーホフ戯曲「ワーニャ叔父さん」のソーニャの最後の台詞にトライしていた。有名なやつだ。
知らないという方に向けてこういう台詞。
関連動画を参考にしつつ、台詞に向き合う時間を費やす中で、ある日の練習中、私が幼少期の時に亡くなった叔父のことを何故かふと思い出していた。
私の知っている範囲で、
私の叔父は病死していて、生きたくても生きることが出来なかった人だ。
ある日、病室のベッド近くにあったケーブルを、引きちぎっていたエピソードを、伝え聞いて何故か記憶している。
ソーニャのセリフは、ワーニャ叔父さんの「なんて辛いんだろう。この辛さが君に分かったらいいのに」という台詞の後に始まる。
ふと、死んだ叔父がそう言っていることを考えて、ソーニャの台詞を読んだ時、なんだか掴めたような気がした。ワーニャ叔父さんにとってソーニャは死んだ妹の娘である。恐らくどことなく妹の面影をソーニャは残しているのであろう。ある意味、ソーニャはそれを分かったうえで、ワーニャの妹に成り代わってこの台詞を言っている節もあるのかもしれないし、一歩間違えたらワーニャ叔父さんのようになる可能性を秘めている自分にも言い聞かせるように言っているのかも。
練習の帰り道、アゲハ蝶を見かけた。
叔父が亡くなった直後、我が家の中にアゲハ蝶がやってきたことから、アゲハ蝶は叔父の化身だと幼少期から教えられてきた。
あたし、そう信じてるの、心から、燃えるように、信じてるの。