ルーペと鍵
古い街並みの残る、歴史のある街のアンティークの小さなお店で
古いルーペと鍵を買った。
タロットの小道具にしようと思っただけ。
なんとなく可愛らしかったから。
誰がそのルーペで、何を見たのかな。
誰がそのルーペで、どんなメガネを作ったのかな。
誰がその鍵で、どんなドアを開けたのかな。
誰がその鍵で、どんなドアを閉めたのかな。
そんなことを考えながら、
わたしは、たくさんあるルーペと鍵の中で、
二つのルーペと二つの鍵を選んだ。
ルーペと鍵。
わたしは、ずっと、自分というものが何者なのかがわからなくて
自信がなくて、人に合わせることが多かった。
人によって性格を変えているような謎の罪悪感があった。
そこに違和感を感じていた。
だから、なんだかいつも心が置いてけぼりだった。
でもその日、友達が教えてくれた。
『人にはたくさんの人格がある。それでいい。それを使い分けて人生を自分で創造していくんだよ。』
それを聞いて、わたしはなんだかほっとした。
誰かに合わせてしまうと思っていた自分は、
本当はその人といる時に心地いい自分自身でいるのだとしたら、
それも、愛おしい自分の一部なんだ。
だから、安心して色んな自分を解放してあげていいんだ。
わたしは、ルーペと鍵を手に入れた。
わたしの心を覗くルーペと、
わたしの心の鍵を開ける鍵。
わたしは、ルーペと鍵を手に入れた。
誰かの心を覗くルーペと、
誰かの心の鍵を開ける鍵。
晴海 たお