『バンオウ-盤王-』第50話「王者の一手」感想 月山さん助けて お兄ちゃんはいつもヤバいけど過去最高にヤバくなってる
◆殺意(プレッシャー)
12月29日(金)に『バンオウ-盤王-』の最新第50話が配信された。
うお…こんなん勝てる気がしねえ…
先週は七島名人に悲しい過去を併せての掘り下げが描写され、好感度上昇した反面敗北フラグが更に立ってしまったように見えたクチなのだが、今はそういうことを気にさせるのを禁ずるほどにスゴ味オーラがすごい。相当ゾーンに入っているようにも見える。
この七島名人のオーラを「殺意(プレッシャー)」と称する今週面白モブ兼実況のナカムラさん。前にも登場していたな。アトムみてーな頭しててイカつい形相の割には将棋教室の常連に相応しいくらいフレンドリー。一見ふざけているようで殺意が画面越しから伝わってくるのは真言すぎる。
いやもうマジヒェッとなったもん七島名人のソレ。画の説得力すごいなこの漫画。もう毎週言ってますけど。
◆王者の一手
冷や汗とは分かり易い漫画的演出にしてバロメーターでもある。
前回まで全くその様子ではなかった今回月山さんが一転攻勢されていると、七島名人がいよいよ覚醒したのがとても分かり易い。
不思議だな。月島さんピンチだというのに、七島名人がようやく本腰を入れられた歓びを今は味わいたくなる。
これまでも描かれていた武将のイメージ。こういうのは本作どころか将棋漫画以外でも見られる比喩表現・演出だが、主張しやすい反面として演出が滑ってしまう(雰囲気だけで誤魔化してしまう)恐れがある。「それやりたいだけだろ」と言われてしまうような滑稽さとも言えるだろうが。勿論本作はそんなことがない。
一手だけで変わる戦況。
一瞬の隙やミスも許さない、そんな緊張感を煽らせるに相応しい好機となった。将棋と仕合って意外と似ているものがあるんだな…と感心させられたり。況してや、七島名人の殺意が凄まじいのだから本気で殺られる覚悟で挑まなくてはならない月山さんと読者の一体感が伝わってくる。
月山さんの一手は、伊津先生も驚愕かつ、岩本さんでも恐ろしくて絶対指せないのだという。将棋に詳しくないぼくでも、月山さんが真剣勝負に挑んでいるのが分かる。盤面を読み取ることが出来れば更に面白いだろうが、シチュエーションだけでも面白く仕上げるのはすごい。
二人ともかっこいいな。
イメージ映像とはいえ、月山さんは数世紀前から生きているから実際にこんな仕合をこなせた過去が有り得るのも強みなんじゃないかなと思えてきた。七島名人のご先祖様が似ているとかそういうの。月山さんに悲しい過去(と将棋の出会い)は1話でもうやっちゃったけど、あれはダイジェストじみていたし、その気になればもっと掘り下げられそうなんだよな。
インターネットなんて勿論ない明治や大正の時代、将棋文化がどのようなものなのか歴史資料の価値も兼ねて見てみたくなるのだ。
◆お兄ちゃんはおしまい!(いつも)
お兄ちゃん生まれたての子鹿みたいに情けなくなってるんですけど?
これまでアホみたいに魔王みたいにギャハハハ騒いでいたのに、足がガクガクしているし、興奮のあまり失禁するんじゃないかとちょっと不安になってしまった。お兄ちゃんならやると思う。
お兄ちゃんは「月山さんがこの敵意丸出しな奴をブチのめすのを見たい!」「こいつに打ちのめされる月山さんも見てみたい!」と厄介すぎる二極化していた。本当に魔王みてえな性格してやがる。
分かり易く言い換えると「二人とも勝ってほしい!」ってことになる。ぼくはこの漫画においてはそんな精神になってしまうケースがこれまでも多かった。が、お兄ちゃんに限っては敗者が負ける無様な姿を見てみたいマジ厄介案件なんだもんな。
そういうのが実にお兄ちゃんらしくある。愉悦部らしく、敗者が嘆き苦しむ姿はそりゃあ見てみたいだろう。お兄ちゃんが楽しそうでなによりだ。
将棋のことがさっぱり分からんのに映像から人物像を読み取れるだけでハイテンションで楽しんでいるのは観戦者の鑑ではなかろうか?
最後のページすげえな。
情報量が少なく見えるようでその実豊富だな。
ヤバいのは元からだろとか、敗者を選べないジレンマ故に充血レベルに興奮していると確かに過去最高にヤバいなとか、対局中の月山さんにどうやって助けを求めるんだよとか、煽り文がお兄ちゃんガン無視だとか、今年最後の更新を締めくくるに相応しい(?)クソ面白展開として幕を閉じた。本当にこの漫画はお兄ちゃんが面白すぎるな!
たぶんこの勝負はあと2話で決着つくと思うので、決着時お兄ちゃんは満足そうなツラして真っ白になっているのが嫌でも想像できる。