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『バンオウ-盤王-』第53話「終局」感想 勝利に飢えた棋士たちの往く果て


◆勝利の価値

1月26日(金)に『バンオウ-盤王-』の最新第53話が配信された。

月山さんの自信に満ちた表情に苛立つ七島名人。決して慢心しておらず、だが苦しみを耐え抜いたような真剣の眼差しである。これを勝者と確信してしまったのは果たしていいことなのだろうか。

勝利絶対主義の七島名人。「敗北からは何も学べない」という持論には異論を唱える人は少なからずいるだろう。その敗北を糧にして次回への勝利に向けるのはスポ根漫画なら有り得る。この後七島名人がそのように改心・成長する可能性も有り得る。
だが七島名人は以前描かれた悲しい過去と併せて、勝利に執着しなければならない説得力が見事だ。負けて「まあ次回次頑張ればいいか」となるのは極めて解釈違いである。

ヒイイ~…勝利のことしか考えてねえ!これ月山さんならまだしも、他の棋士だったら確実に怯ませるどころか殺意バリバリだろうよ!すごぶる闇を感じずにいられないよ!

◆観戦のみなさま

前回お兄ちゃんは未登場ながらもどうせ賢者タイムと興奮タイムを反復横跳びしてんだろと思っていたクチだが、今回は賢者タイムと弄るのは無礼だろう。肉体的疲労を伴いながら戦い続ける月山さんを見届けるのはお兄ちゃんとして真に在るべき姿だ。できればこれからの決勝戦もそうであってほしい。
………けど変態ムーヴは暫くお休みなのかと思うと寂しい気持ちがあるなあ。

うわ!正体バレの危機こわい!
まあ既にアンナさんにバレちゃったから他の人が知ってもなにをいまさら…と言いつつも、月山さんに探りをかけられて厄介なことになる可能性はまだ見込めてしまうわけで。とりあえず今回は正体バレに起因しなくてよかった…

新堂竜王顔怖くない????
ネタで言っているのではない。ただこれまでと比べると狂気を感じるのは事実だ。次なる相手として月山さんに興味を持ってくれたのは嬉しいのだが…またしても悪い予感がしなくはない。対局中に正体バレするんじゃないだろうか。根拠もなしに「あなたは吸血鬼ですよね?」と言ってきたらあたおか扱いだが。

◆逆境

おまおか
スゴイシツレイなこと言ってやがるよこいつら!当たり前のように言うなし!まあ何度も擦れるくらい月山さんは将棋ジャンキーなのでおかしい人と見られても全然無理はないのだが。どちらかというと、子供にも将棋に付き合ってくれる良い人という側面に注目させたいんだけどなあ。

これまたえっぐいなあ。
リアルの棋士もこのように意識が朦朧になったのだろうなとわからせられる。何らかの資料やインタビューで対局当時はどうだったか、読んでいてこちらにも身に沁み込むような体験談が綴られているのだろうか。しかし月山さんがこうなるのは数百年生きていて初めてなのか。大会の類には出場していないエンジョイ派だったしな。

わーもう終盤に相応しい展開じゃん。走馬灯の如きこれまでの思い出、強者との邂逅・勝負。300年費やした将棋人生はここで終止符を迎えてしまうのか…先週ラストは勝ち確を予感せざるを得なかったが、こういう結末も有り得てしまうのか…

それでこそ月山さんや!!!!
いやーここすげー良かったですね!一気に感情ぶち上げられた瞬間でしたねえ!!
「月山さんがここで諦めるだなんてらしくない!」と思いつつも「ここで意識が朦朧とするなら余程やべえんだな…」と納得しつつ諦念感を煽られた。要するにどちらに揺らいでもおかしくはなかった。それくらい作中に没頭していたわけだ。
それにしても将棋にはまだ十分満足し切れてないからここで負けるにはいかないとか凄まじい執念だ。流石将棋ジャンキー。これはおかしいですわ。ヘンタイですわ。

月山さんも負けず嫌いなあたり、七島名人とは一番似たり寄ったりな人物なのかもしれない。敗北に対する考えが異なるだけで。そこは経験の年数が桁違いなのもあるからなあ。

◆決着

長き激闘の末、ついに七島名人が投了となった。
ややあっさりなのは否めない。「投了したくない」「負けたくない」的な葛藤は見られず、寧ろ月山さんを強者として認めて素直に頭を下げていたのだが、隠しきれぬ本音はあったのではないだろうか。まあそこは次回触れてくれるかもしれない。なにせ今週大増29ページだしな!

ラストページには「第60期王座戦五番勝負 第1局(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)棋譜より」と記載されてある。シチュエーション自体は異なるが、棋譜そのものは今回の対局に活かされたのだろう。興味深いのでそれについて調べてみると、

開始 09:00  終了 21:46

半日も戦っていたのォ!?
いや合間に度々休憩を入れていただろうし、この勝負だけに限らないのだろうけど、そんなん頭おかしなるで…藤井くんも長時間それくらい戦っていたとかかっけえじゃん。対局時間だけを物差しにすべきじゃないのは理解しているけどさ。
将棋って予想以上にエキサイティングなんだな…

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