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「200字の書評」(290) 2021.3.25
こんにちは。
春爛漫、桜満開の便りが連日報じられます。水仙が終わりかけ、雪柳が白い生け垣を成し、ボケが存在を主張し、桜が見事になってきます。郷里の朝晩はまだ氷点下なのですが…。散歩の道すがら日ごとに色彩が豊かになっていくのは、心弾みます。
でも、猛威を振るうコロナと軍部暴虐のミャンマー、強権支配の香港などの事態を思うと、暗い気持ちになります。腹の底から笑う日が来ることを願う今日この頃です。
さて、今回の書評は本物の書評家に登場してもらいましょう。
斎藤美奈子「中古典のすすめ」紀伊国屋書店 2020年
著者は小気味よい切り口の、コラムの書き手でもある。冒頭「中古典とは、私・斎藤の勝手な造語である。古典未満の中途半端に古いベストセラーを指す」と著者らしい規定をしてくれる。60年代から90年代にかけての話題作の内容と筆者について、時代背景を解説しつつ、名作度と使える度の2つで評価している。その評価はコラム同様、どこが名著なのかわからないと評される中根千枝など、大家新人を問わず舌鋒は鋭く忖度なしである。
【弥生雑感】
▼ 緊急事態宣言が解除されました。長引いたことによる慣れと、経済的な困難などの事情は理解できます。空港、観光地、花の名所は大賑わいです。しかし、コロナ禍が終息に向かっているわけではありません。どのような道筋で感染を抑え、安心できる生活を実現するのか、政府や行政、専門家と称するグループの説得力ある方向性は示されていません。権力的な手法では解決にはならないと思います。スカ政権は強権を振るうのが大好き、東京、大阪のタレント紛いの知事はメディア活用が巧みで、やっている感の演出が得意技です。他の県では着実に成果を上げている知事も少なくありません。地方の知事は地味でメディア映えがしないとでもいうのでしょうか。
▼ 東北では強めの地震が続き、関東でもそれなりの揺れ具合でした。大震災から10年、未だに避難者が相当な数にのぼり、人生を狂わされた方も多いのです。原発事故の後始末は目途すら立たないのが現実です。国土強靭化などと、膨大な予算と人員を動員して鉄とコンクリートで固めても、自然の力の前には蟷螂の斧です。もっと謙虚に、自然の恵みと共生する生き方を求める方が望ましいと思います。
<今週の本棚>
半藤一利「B面昭和史 1926-1945」平凡社 2016年
改めて失ったものの大きさを感じます。歴史探偵を自称して、体験に基づく昭和の真実を探求し続けてきました。伝えていかねば、との決意がどの著作にも満ちています。庶民の目線を忘れぬ記述は、何度読んでも心に響きます。今や盟友は保坂正康だけになったようです。
ジェイムズ・オブライエン「科学探偵シャーロック・ホームズ」東京化学同人 2021年
名探偵ナンバーワンに上げられるホームズは、優れた観察眼と緻密な頭脳によって難事件を解決します。日本では明智小五郎か祝十郎(月光仮面)でしょうか。原作者コナン・ドイルは医師であり科学的思考が身上でした、それを反映して、ホームズは化学実験が趣味で、学識豊かな人物としての設定がされています。名探偵は実は『科捜研の女』並みの科学的捜査の先覚者であったのです。
中学生のころ読んだ記憶がありますが、もしかするとダイジェスト版だったかもしれません。もう一度手に取ってみようかな。
春の喜びと、見えざるウィルスの脅威、愚劣で権力的なスカ政権の蒙昧さが同居しています。国民主権といい、国会は国権の最高機関と位置付けられながら、私達には何を知らされているのでしょう。「答弁は差し控える」「資料は廃棄した」が連発される国会、言葉が失われる怖さに慄然とします。
どうぞ心身ともに健康でありますように。