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君の21グラム

 君が21グラム減った。たったの21グラム。だけれどなくてはならなかった、21グラム。それは、君を離れて、どこへ行くのだろうか。天国かな。宇宙の果てかな。きっと地球以外のどこか。でも地獄じゃないね、だって君はとっても優しかったから。
 空を見上げて君の21グラムを探す。僕の見渡せるところにはいないかも。大気圏を超えて、宇宙に行ってしまったかな。宇宙はどんなところだろう、いつか教えておくれよ。またたく星空も、照りつける太陽も、きっと宇宙では違う何かなんだろう。いつか必ず、教えてくれよ。
 君の21グラムはもしかしたら僕のそばにいるかも、なんて思って、キョロキョロ辺りを見回す。枯れ葉が落ちる音とか、強い風の音ばかりに気を取られる。ああ、もうこんなにも、季節はめぐったよ。君の21グラムは、今どこにいるのさ。早く戻ってきておくれよ。ぽつり涙が零れ落ちる。生ぬるい風が肌を撫でた。
 毎日夜空を見上げるようになって、少し不思議な星を毎日見かける。他の星よりずっと近くにあるような、ずっとこちらを見ているような、不思議な星。やわらかなオレンジに包まれて、ただそれはそこにある。僕が悲しい時は、いつもより一等輝いている。きっと君の21グラムは、星になったんだね。君は優しいから、優しすぎるから、まだ僕を見守ってくれている。でももう大丈夫。君がいるってわかったから。僕はもう、大丈夫だよ。いつか気が向いたら、地球に戻ってきておくれ。いつまでもいつまでも待っているよ。さようなら、君の21グラム。

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