魔法使いの髪
美容院に行ってきた。
こんなにズボラな人なので、意外と思われるかもしれないが
2ヶ月に1度くらいのペースで美容院に行っている。
昔はあーんなに美容院が苦手だったのに
こうして思い返してみると、
美容院も悪くないな、と思わせてくれたのは加藤さんだった。
この人に髪をいつも切って欲しい、と最初に思わせてくれたのも加藤さんだった。
加藤さんがいたから、安心して美容院に行く、ということを覚えたのだと思う。
わたしの美容師は加藤さん、そんな風に思わせてくれた人だ。
ちょうど加藤さんが東京を離れたとき、
わたしも少しずつ町田を離れて、
いまは、彼に髪を切ってもらっている。
彼に髪を切ってもらいはじめてから2度、別の美容院に行ったけど
やっぱり彼がいいなあと思うので、
やっぱりわたしは、彼のことが好きなのだと思う。
美容師さんは、魔法使いみたいだ。
いつも、わたしは爽快な気持ちで美容院を出る。
そうだ、昔は
思った髪型にならなくて、美容院が嫌いだったんだ。
加藤さんと彼については、安心して自分を任せていた。
どうすればいい?めんどくさいのは嫌いなんだよね、というのにも
笑ってわかった、こうしよう、と言ってくれる。
そうしてわたしにとって、美容院は面倒なところではなくなった。
彼のおかげで、今もそうだ。
今日は、魔法にかかりながら彼の話を聞いていた。
わたしは彼の、まっとうなところが好きだった。
春には花見をして、夏には海に行く、という
わたしが全然興味を持てなかったり、機会がなかったそういうことを
当たり前みたいにしているところが好きだと思う。
今日は大晦日の話になって、
大晦日は必ず家族で過ごす、みんなでビンゴをする
全員、大晦日の夜から元旦の昼までは一緒に過ごす
というはなしを聞いて、目からウロコだった。
心底すてきだなあ、と思った。
「大晦日は彼女と過ごしたい、とか思ったりしないの?」という質問に、
彼は面食らったような顔をしたあと、「思わない」と答えた。
彼が話してくれた恋愛観も愉快で、わたしはたくさん共感したし
矛盾してるなあ、
でもその、矛盾してるってことは
好き嫌いをしっかり判別しているというか、
Aになりたいから、Bをしなくちゃいけない、みたいな
強迫観念がないところが、わたしはすごくすてきだなあ、と思った。
2ヶ月に一度会って、他愛のない話をしたりしなかったりする
気づいたら髪はさっぱり落とされていて
(わたしはほんっとうに毛の量が多い)
今日も良い収穫があって、良い魔法にかかった。
またかかりたい、と思える魔法。
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