やりたい「こと」を探す旅を、中断しようと思う。
「やりたいことやって生きていきたい」と中学生の頃から考えて生きてきた。
自分に自信がなくて、何かにつけては「自分はダメな人間だ」と思い込んで生きてきた。
それと同時に抱いていたのは、「やりたいことをやりたい」という願いだった。
僕は今24歳。中2の時に強く抱いてから高校、大学と、10年を過ぎようとしている。
大学を休学してからようやく、自分に自信を持てるようになったことで、「自分は変われるんだ」と思い、多くの事にチャレンジしてきたと思う。
■主体的に自分のやりたいことを引き延ばしていく探究学習
■SASUKEが好きで、本気になってやってみようと思って実行した、オーストラリアでの修行、クラウドファンディング。
■「対話によって人の悩みに寄り添えるようになりたい」と思って学んだカウンセリング。ワークショップも開催した。
■2020年のコロナ禍によって生まれた運動ブームに乗って始めた、フィジカルトレーナー。
■「探究学習」に関わりたいと思って、本命企業1本に絞った就職活動。
■モンスターボックスがやりたくなって、2020年8月に1年10か月ぶりに再開し、現在19段まで跳べるようになった
ざっとこういうことをやってきた。
しかし、その多くは長くは続かなかった。この中で続いているのは、自分がトレーニングを続け、モンスターボックスに励んでいるということだけだ。
客観的に見れば、「やりたいことをやっているじゃないか」という印象を持たれるだろう。
やりたいことはやっていたと思う。けれど、生計を立てられるようになるまでスキルを高めたことはなかった。
カウンセラー、トレーナーは続かなかった。これで生活していきたいと思えなくなった。
探究学習。最終面接に落ちた後も、別の会社でインターンに興味を持ったのだが断ってしまった。
そして、今、「一旦やりたいことをやって生きていくのをやめた方が良いな」と思うようになった。
初めはやりたいと思うくせに、それを高めようと思えない
なぜ途中でやめてしまったのか。
それは、「本当にこれで生きていきたいのか?続けていきたいのか?」と悩み、決断に自信を持てなくなっていったからだ。
「もっと成長して、一人前になるんだ!多くの人に提供してみてスキルを高めるんだ!」と思ったのはほんの数か月程度。
モチベが上がらず、熱しやすく冷めやすい、僕の情熱。それは花火のように、着火してからは早く燃え上がるのに、冷める時はすぐに冷める様と似ていた。
「やっぱり続かないな。他にやりたいことがあるはずだ」と探していく。
カウンセリングからトレーナーへ。トレーナーから探究学習という教育の世界へ。そのように僕の探究が迂回していった。
迂回するたびに「自分の情熱を表現できるような仕事をしたい」と思うくせに、「なんか違うからやめとこう」とすぐに決断を変えてしまうのだ。
なぜ僕はやりたいと思ったことなのに続かないのか
最近その原因が分かった。
「どうしてやりたいと思ったことなのに続かないのか?」
その答えは1つ。
「何をするのか、具体的なことやキーワードに固執しすぎていたこと」
にあると思う。それはまるで、巨大石を引っ張るかのように重かった。
周りの人の環境が大きかったと思う。僕は、「やりたいことをして生きていきたい」と願う人が集うコミュニティにいて、「自分の志や痛みを世界に表現して、社会をより良くすることで人の役に立ち、稼いでいく」ことが最善だと思っていた。
Facebookでキラキラしている人を見ると、羨ましいなと思った。
実際にやりたいことを見つけて稼いでいる人がたくさんいたから、自分もそうなれるんじゃないか、と思い込んでいた。
「何をするべきかでなく、何をやりたいのか」を意識すること。
それはどうやら僕には向いていないようだった。僕にはやりたいことで何らかの価値を生み出す必要はないんだと思う。
例えば、僕は学ぶことは比較的好きで、それを人に伝えることも好きだ。トレーニング、食事、自分の知的生産術、脳科学。お金になりそうなレベルで勉強している実感はあるが、それをワークショップにしたいとは思わない。
1回単発ならできるかもしれないが、それをやっても面白くなさそうだなと思った瞬間に、やめてしまう。
自分の価値観が表現されていることには、拘りが生まれる。その拘りが凝り固まって柔軟性を失っていくのだ。
僕は自分の価値観がほぼそのまま表現される仕事をしない方が、感情に左右されずに仕事ができる。そんなことを、今やっているバイトで実感した。
教育、カウンセリング、トレーナー。どれも価値観が明確に反映される仕事だ。それ故に自分の価値観に固執してしまっていた。
どれも自分の感情が左右されやすい分野である。それをコントロールするのはどうやら難しそうだと思った。
人生の大先輩のアドバイスは、僕の凝り固まった思考を解いていった
一緒に動くメンバーの年齢層は多様で、10代から70代までと幅広い。この前、60代のおばちゃんと75歳のおじいちゃんと一緒に働いた。
親や祖父母の世代である。このくらいの年の方を相手にすると、自分の親や祖父母を基準に見てしまう。
意外にもそのどちらの方も自分の親とはかなりかけ離れていて、生き方に柔軟性があるなと思ったし、年が離れていても話が盛り上がった。
その2人は、高齢を迎えても尚、やってみたいことがあると言っていた。僕は人生の大先輩を前に、色々と相談に乗ってもらった。
2人が口をそろえて言っていたのは、
「やりたいことが仕事と繋がっていなくてもいい。海外に行きたいとか、自分の庭を持ちたいとかでも全然いいじゃない」
「こういうのが流行りそうとか、こういうのがいいんじゃないか、で仕事を選んだっていい。入った時にはっきりしたやりたいことなんてなかったよ」
ということだった。人生の大先輩がそう言うのだから、それはきっと間違っていないなと思った。
「やりたい仕事なんて見つからなくてもいいじゃん」と思ってきたし、もっと抽象度の高いところで留めてもいいじゃないかと思うようになった。
このバイトで結構面白い経験ができていて、少しずつ自分のしていて気持ちよく、感情が左右されない、気分が安定して取り組めることが見つかりつつある。
カオスな状況ゆえに面白いバイト
バイトは結構楽しくて、業務上の流れがしっかり確立されていない部分が多い。
上司が忙しすぎて、バイトメンバーの主体性で何とか持っている体制でもある。そのため、「どうしたらもっと動きやすいのか?効率的に動けるのか?」を考えて仕事をしている。
業務の報告も、双方の事実確認がとても大切だなと学ばされている。目まぐるしく変わる状況のため、解釈不一致が生じると後で尻拭いをする必要があるため、事実を正確に報告することが大切だ。
業務は直に身体を動かしていることが多いため、しっかりメモをしないと伝わらない部分が多く、しっかり報告できないことも学んだ。
僕は歴が長いこともあり、それなりに任されている実感がある。
「どうしたらメンバーが仕事をしやすくなるのか?」を考えて、実行してみるのが楽しい。
このバイトをして楽しかったこと。
■倉庫への行き方を詳しく説明したノートを作成して喜ばれた。「見やすい!ありがとう」と言ってもらえた
■依頼されたことを、試行錯誤しながら人に相談して、最終的には解決できて、感謝された
これが結構気持ちいい。困ったことを解決する。それが仕事なんじゃないか、それでいいんじゃないかと思った。
頼まれたことをやり切ること。その報連相を双方理解できるように意識すること。これが楽しい。
「『どうしたいか』を考えるのではなく、『どうしたらいいのか?』を考える」ほうが好きで、面白い。
どうしたいかを感じるのは、趣味の範囲で留めてもいい気がしてきた。
僕は、一緒に働く人が働きやすいように整えることが好きだと思う。
■固まっていないルールやマニュアルを作成し、誰もが使いやすいように運用していく
■新しい人が入ったら積極的にコミュニケーションをして、居心地を良くしていく
■業務上でやりにくい点を見つけたら、それを上にフィードバックを送る
■頼まれたことを、相手の期待値を超えられるように仕事をすること
今やっているバイトはこういうことを楽しんでやれている。あと2か月で終わるのが残念だ。
まっすぐすぎた想いも、歪みすぎた思考も、もう手放していい。
10年間、抱いてきた「やりたいことをやりたい」という願い。
自分でも言うのも何だが、それはとてもまっすぐで、純粋な願いだった。
けれど今、やりたいことなんてもっと自由でいい。それこそ、仕事と生活を分けたっていい。
生きづらさを助長する願いなら、手放していい。
自分が心地いいことをやっても成長したいと思わないなら、具体にとらわれないで、抽象レベルで動いていい。
価値観なんて一緒に仕事をする人を選ぶ時だけでよくて、何をするのかは抽象的な範囲で留めていい。感情に左右されて苦しむくらいなら割り切った方がいい。
今まで割り切って仕事ができなかったのは、感情が動く仕事をしてきたからだと思う。自分の感情をあまり感じなくても何とかなる仕事をしたっていい。
自分の感情や価値観を表現したいなら、趣味に留めておけばいい。運動や演劇をやるのに、お金を頂く意識とかは持たなくていい。
きっと、これで仕事をしていきたいと思うことは、今は見つからない。
その感覚が腑に落ちた時に抱いたのは不安ではなく、安心感だ。
今やりたいのは、頼まれることが多いこと。リスクを未然に防いで事が問題なく進むようにすること、それをサポートすることだ。
これは、やりたいことがない人向けの生存戦略なんじゃないかと思う。
自分や社会に対して期待値を高く持ちすぎたんだろう。そんな高い所から飛び降りていいんだ。
今まで興味のなかったことに興味を持ち始め、なんだかワクワクしている。
そんなことを思いながら、バイトに入るのを楽しみに過ごす日々だ。
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