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春の足音まだ遠く
1月期のドラマも折り返しの時期。
今年は、まだ春の足音が聞こえてきません。
そんなこのクールは、「あきない世傳 金と銀」、「東京サラダボウル」、「御上先生」を楽しみにしています。
私が今のように日々ドラマを観るようになったのは、大人になってからだが、もっとも古く、子供の頃から観ていたのが、「暴れん坊将軍」や大河ドラマといった時代劇だった。
今も変わらず時代劇は好きだけれど、最近の地上波では、大河ドラマぐらいしか時代劇がないのが残念。
そんな中、この1月から小芝風花を、1週間に2度、それもどちらも時代劇で観ている。
大坂天満の呉服屋に奉公に出された幸(さち)が、商売に興味を持ち、様々な苦難に遭いながらも、周りの人々に支えられて、女中から、主人の妻となり、その商才を発揮していく「あきない世傳 金と銀」。
女中から主人の妻となり、そして商才を発揮する展開は、「あさが来た」や観たことはなくイメージだけだけれど「おしん」を連想させる。
時代劇にしてはかなり展開が速いが、物語に引き込まれて、アッという間に1話が終わる。
これは子役も含めて、共感できて、応援したくなる主人公だからこそだと思う。
「あさが来た」で知った小芝風花は、とても親近感の持てる堂々の主人公ぶりで、1週間に2回見ていても、時代劇との相性がいいように感じる。
1話で随分と話が進むのもまた、主人公の怒涛の人生ぶりを感じさせる。
展開が早く、いまだ着地点は想像できないが、あと少しで終わる、小芝風花祭りを楽しみにしている。
外国人による犯罪、あるいは外国人が被害者の犯罪を捜査する警察官と、中国語の警察通訳人の2人が事件を解決していく中で、日本での国際犯罪や、在留外国人を取り巻くさまざまな現実を描き出している「東京サラダボウル」。
私にも、在留外国人がずいぶんと増えてきている、という感覚はあった。
けれど初回を観て、まるで日本じゃないみたい、と思った。
私の口は保守的なので、作中出てくる食べ物にはあまり食指が動かないのだが、今や東京にはこんなにもたくさんの、いろんな国の人々が暮らしているのだ。
そして彼らにも、それぞれに人生がある。
その現実に改めて気付かされた。
外国人が関係したいろんな事件のことは、ちらほら目と耳にする。
けれど、在留外国人を取り巻く厳しい現実や、彼らと共に働き、暮らす日本人との間に生じる戸惑いや軋轢には、どこか他人事になっていた。
この作品は食を緩衝材にした、エンターテイメントでありつつも、私たちがこれから向き合わなければならないこの現実に、結構ズバッと切り込んでいて、考えさせられることも多い。
また、どんな料理もおいしそうに食べる奈緒と、中国語をしゃべっていることに全く違和感を感じさせない松田龍平の掛け合いも、自然で、とても息があっているように思う。
訳ありげなベテラン警察官の登場で、在留外国人増加の背後で暗躍する黒幕との対決がどうなるのか、終盤も目が離せない。
私立高校に教師として派遣された文科省のエリート官僚と、彼が担任をするクラスの生徒たちが、教育制度や社会の問題、そして教師や生徒たちと関わりのある大きな事件と向き合っていく「御上先生」。
前クールの「宙わたる教室」もそうだったが、従来のいわゆる学園ドラマとは違い、癖の強い熱血教師は出てこない。それどころか、同じテレビ局で放送されていた有名学園ドラマの弊害にまで言及するぐらい、今の教育制度に鋭く切り込んでいく。
さらに教育の問題だけでなく、社会や政治的な問題にも言及し、その上教師や生徒ら登場人物と深く関わる大きな事件も存在しており、学園ドラマの枠に収まりきらない、社会派、ミステリー、サスペンスの要素まで盛りだくさんの作品だ。
豪華な出演者は「日曜劇場」ならではだが、その内容は、いい意味で従来の「日曜劇場」らしさを感じない。
社会が抱える多様なテーマを、真摯にリアルに扱いつつ、エンターテイメントに仕立て上げていく、そういう意欲的で、良質な作品が、このところ確実に増えてきているように感じられる。
これだけ大きな風呂敷が広げられているので、どうすべてが回収されていくのか少し不安はあるが、とにかくアッという話に1話が終わるこの濃密な作品が、これからどこへ向かっていくのか楽しみでならない。
*この記事は俳優さんの敬称略にて失礼しました。