終わりの見えぬ暑さ
7月期のドラマも後半の時期。
オリンピックの熱戦は終わっても、厳しい暑さが続いています。
そんなこのクールは、「笑うマトリョーシカ」と「降り積もれ孤独な死よ」にハラハラしています。
人を惹きつける天賦の才を持つ若手政治家。
しかしその周囲では何人もが不審な死を遂げており、彼が実は主体性のない「操り人形」なのではないかと、女性新聞記者が疑ったことに始まる「笑うマトリョーシカ」。
自分の意思を持っているのか、それとも本当にただの「操り人形」なのかが分からない若手政治家をはじめ、秘書や謎の女たちなど、それぞれに思惑や裏がある得体の知れない登場人物たちが繰り広げる、心理的な駆け引きがスリリングでおもしろい。
昔から「謎解き」を軸にするドラマは多いけれど、「笑うマトリョーシカ」は、「犯人は誰か」というありがちな「謎」ではない。
不審死は事件なのか、事件なら犯人は誰か。若手政治家を操っている真の黒幕は誰か、その目的は何なのか。若手政治家は本当に操り人形なのかなどなど、いくつもの謎があり、少しずつ分かってくることもあれば、新たな謎も生まれてくる。
また、真実を求める女性記者を中心にしたヒューマンドラマの要素もあるし、政治も絡むし、サスペンスやミステリーなど色んな要素を併せ持った作品だ。
さらに現時点では、これらの謎が明かされていった先にある、最終的な「真実」(?)が一体どのようなことなのかがまだ見えていない。
もう一本の「降り積もれ孤独な死よ」は、ある屋敷で13人の子供の白骨死体が見つかったことから始まるサスペンス。
「13人の子供の白骨死体」なんて、これが現実だったらとんでもない事件なのだが、すべての登場人物にどこか危うさがあり、物語全体が何とも言えない不穏な空気に包まれているので、観ている方にも緊張感が生じるし、不思議とこの設定にそれほどの不自然さや違和感を覚えない。
8年前と現在、さらにはもっと昔の過去と、時間を行ったり来たりしながら、視点も変わる展開で、謎が1つ解けたように思ったら次の謎が湧くので、観ている内に頭が混乱してくる。
けれどその分からなさが心地よくもある。
1話完結タイプではない、続きものの謎解き作品は、時に飽きを感じてしまうこともあるけれど、どちらの作品も複雑な構造と、一筋縄ではいかない展開ゆえに、ここまで飽きることなく、先の見えなさと謎解きを楽しめている。
今年の残暑はまだまだ続くらしいので、これからラストに向けて、ますますの先の見えないハラハラ感で、ちょっとは涼しく感じられないかと期待している。