今、あなたは
パシャリ。
夕刻の綺麗な青空を写真におさめる。
それをsnsに上げる。
snsで可愛い絵を見つけた。それを描いた人が、
「今度○○さんのイベントに行ってきます。楽しみです」とあった。
茂里絵奈は、○○さんのイベントって、私が行きたかったのだ。どうしてもその日は予定があって行けなかった。いいなあ。
「はじめまして、羨ましいです。今度、感想教えてくださいね」とメッセージを送った。
「いいですよ」と返ってきた。
「ところで、空、好きなんですか?空の写真が多いですね」とメッセージが来た。
「空は見ていると、癒されます。それに皆んなと繋がってる、そう思えるんですよ」と絵奈がメッセージを送った。
もう少し文字で話してみたかった。
「絵は、どの類の物を描くんですか?」と訊いてみた。
すると、
描いた作品がアップされた。
少し分かりにくい絵だった。が、上手いということは理解出来た。
「何にで描いてるんですか?」
「ペンです。100均のこれ」写メが送られて来た。
素敵な絵だということ、そしてお礼を伝えて終わった。
ある日、
「鳩がベランダに来て、うるさい」と、その絵の上手な人がつぶやいていた。
「今は、鳩が嫌がる液体とか売ってますよ」とメッセージを送った。
それから、度々会話が続いた。そして、その人が描いた即興の絵も時々アップされていた。
絵奈は、仕事が繁忙期に差し掛かり、身体的にも精神的にも疲れ果てていた。そんな時、ふと、その絵の上手な人に、
「私に一枚の絵を描いてアップしてもらえませんか?」と、無理を承知でお願いした。すると、
「いいですよ。疲れたあなたを、励ます絵を描きますね」と、メッセージが届いた。
その日の夜にアップされた。それは、女の子が、お花を持った男の子に向かって微笑んでいる絵だった。
嬉しくて、心癒されて、
「その男の子は、あなたですか?」と絵奈は訊いた。
「もしかして、私をずっと男だと思っていましたか?よく間違われますが、女ですよ」と、メッセージが返って来た。
それからも少しはメッセージのやり取りはしていた。
それから絵をアップしていたその人は、挿絵を描く人に認めれれた。
もう、その人の絵はアップされることもなく。もう見ることもなくなった。