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『綺麗に並べるということ』(小説)③
朝から蝉の鳴き声が、空気が弾けんばかりにうるさい。ベランダに洗濯物を干している中村実和は、灼熱の太陽を身体に浴びて肌がジリジリする。
以前働いていたところは、五時間ほどぶっ通しで走りっぱなしの仕事で、体力の限界と自分で決めつけて辞めた。
辞めたところで次の仕事は決まってなかった。次の仕事先が決まるまで貯金を崩していた。しかし、貯金ももう底をつきかけている。タウン誌やアプリでも見ているがなかなか自
『綺麗に並べるということ』(小説)②
ここは民家はない。大きな真っ直ぐな道路に沿って窓のない四角く巨大な建物がそれぞれ建っている。
建物には小さく社名が掲げられている。CMで目にする社名等もある。ここは、ゆはいる配送センターだ。
昼間というのに、歩道には人ひとり歩いていない。
道路脇には所々10トントラックが、昼休憩のためか少し窓を開けて停めている。
そういう光景を横目に中村実和は、トタン屋根で周りの建物より一回り小さい四角い
『綺麗に並べるということ』(小説)
コンクリートの端に枯れ葉が風で集められている。昨夜の強い風と今朝の湿った空気で枯れ葉は少し水分を含んで重なり合っている。
仕事の作業場に入ると、高校生らしき紺のジャージを着た長身の肩より少し上のストレートの髪の男女の区別がはっきりしない人が、立っていた。
「おはようございます」と、中村実和はその高校生らしき人に向かって挨拶をした。
「おはようございます」その高校生らしき人の先生が、
「おはようご