【書評】2021/09
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
の続編であり完結編、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』
前回も今回も、英国(と、たまに日本)における人種差別、LGBTQ、貧困、格差、政治、そして友情と成長について、重くならず軽やかに書いているエッセイ本。
母親である著者の目線で、主に中学生の息子とのエピソードから考えさせられたことや主張を書いている。
ノンバイナリー、ポリティカルコレクトネスなど、英国に限らず学校でも社会でも皆んなが考えて議論するテーマになってくるだろうなと思った。
(この息子、哲学者のように達観した捉え方をしていて、本当にノンフィクションか?との批判があるらしいけど、どっちでも良いと思う)
そして、特に感動したエピソードはこの3つ。
(ネタバレ注意)
・スター誕生
差別されいじめられていた黒人少女が圧倒的な歌唱力で学校中を涙で包んでソウルスターの誕生!となったエピソード。その時、この少女の母親が「あの子はみんなの中の1人に過ぎない」ときっぱり言い、「それは謙遜の言葉ではない」と著者が解釈した。
特別な才能によって特別なポジションに上がることよりも、才能によってみんなの中の1人になれたことが、今のこの少女にとっては大事だということを母親は確信していたことが、すごく印象的だった。
・社会を信じること
日本にて、災害時に避難所の職員がホームレスの滞在を断ったことが、英国でニュースになった。それを息子がスピーチの題材に選んだ。息子は「この職員は、避難所の人たちは皆んなホームレスを受け入れたくないはずだと考えたから、追い出したんだと思う。その職員は、避難所という社会をきっと信じていないんだ。」
困っている人を見たら誰しも助けたいと思うはずで、でも社会はそうでは無いのでは?と信じられなくなる時、差別などの問題が大きくなるのかもしれないと思った。
・リーダーの資質
学校で出された「リーダーに必要な資質とは何か?」という問いに対して、息子が、「導びく(LEAD)ということは、前から引っ張るということだけではなく、ときには一番後ろに立ち、後部が離れてしまわないように押し上げる(PUSH UP)こと」とプリントに書いていた。
これは著者が息子を預けていた託児所の設立理念だった。その理念が今も息子の中で息をしていることに著者が感動したエピソード。
このようなリーダー論は私の世代ではあまり多く語られてこなかったからこそ、頭に入れておきたいと思った。
この2冊は、ちょっと疲れた時にサクッと読むと、回復させてくれるような本としてもオススメです^^