米ペロシ下院議長の電撃台湾訪問
Ⅰ. ペロシ米下院議長、急遽訪台
ーペロシ議長、台湾電撃訪問
・ペロシ米下院議長は8月2日夜、台北に到着。下院議長は大統領継承順位2位の要職。1997年、野党共和党下院議長ギングリッチ氏訪台以来25年ぶり。与党下院議長は重みが違う。
・ペロシ氏は到着後、「訪台は台湾の民主主義と支援する米国の揺るぎない関与を示す。米国は一方的な現状変更の試みに反対しつづける」と声明を発表。
ー急遽浮上したペロシ議長訪台案
・7月28日の米中首脳電話会談。台湾問題で応酬となり、習近平氏はバイデン氏に「台湾問題への干渉には断固反対。火遊びをすれば、必ず身を焦がす」と警告していた。
・8月1日複数の米台メディアが、ペロシ下院議長が台湾を訪問する見通し」と報道。ペロシ訪台が実現するかどうかは、事実上、米中の真剣な鍔迫り合いになると注目された。
・中国が強力に反対、反発することは目に見えており、米国が訪台案を取り下げれば、中国の脅しに屈したことになり、バイデン政権は国内でも弱腰批判にさらされる。
・逆に、訪台が実現すれば、習近平政権はペロシ訪台を止められなかったことで、求心力が翳る。とりわけ11月に国家主席第三期就任を控え、8月には長老の集まる北戴河会議があり、台湾問題は政権最大の「核心的利益」なので、習近平氏としてペロシ訪台は絶対に認められない。
ーバイデン大統領はペロシ訪台計画に消極
・バイデン大統領はペロシ議長の訪台を「米軍は良い考えと思っていない」と記者会見で発言。
・WHは、ペロシ議長の訪台は台湾有事の可能性を巡ってすでに高まっている米中間の緊張を不必要に高めるので自制すべしとの立場。この対応は共和党らから弱腰として批判された。
・ペロシ議長のアジア歴訪計画は、8月1日シンガポール、8月2日マレーシア、その後に日韓訪問も予定されたが、訪台に言及はなかった。ところが、ペロシ議長を乗せてマレーシアKLを発った米軍機は、南シナ海を避けて迂回し、ボルネオとフィリピンの東岸を飛行して台湾に到着。
・このペロシ議長の電撃台湾訪問は、状況を逆転させた。これを受け中国側は激しく反発。
・習近平主席は7月28日の警告が無視されて面目を潰され、米国が「譲れぬ一線」を超えた受け止め。
・WHのカービー戦略広報調整官、議会議長は自身の判断で訪台を決める権利があると説明。
ーペロシ訪台に中国は強硬批判
・中国外務省は「中国の主権と領土保全を侵害した」とし「断固反対と強烈な抗議」申し入れ。
・中国外務省趙立堅副報道局長「中国人民解放軍は決して座視しない。断固として強力な報復措置をとる」と声明。
・中国人民解放軍は即座に「必ず報復措置をとる」と宣言。台湾周辺で実弾射撃を含む大規模な演習を開始。「米国を震え上がらせる」としている。
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