スタートアップにおける、プロジェクトを推進する時のリサーチの手法まとめ
この記事では、私がこれまでスタートアップやNPO、個人のプロボノなどあらゆる場面で行ってきたリサーチを行う際のプロセスをまとめました。
私が普段無意識にやっているリサーチプロセスを本などを参考に言語化してみたものなので、少し抽象的です。
また、リサーチについては、昨今Chat GPTなどを活用することで大幅に効率化ができるようになっているので、この記事の内容はそういったツールを活用した内容の紹介というよりは、リサーチを進めるときの思考プロセス、具体のTipsがメインとなっておりますので、ご了承ください。
なお、本記事で紹介しているリサーチの進め方の内容の多くは、外資系コンサルのリサーチ技法―事象を観察し本質を見抜くスキル を参考にさせてもらっています。
どのような業務を行っていても、基本的なリサーチスキルを学べると仕事がスムーズに進んだり業務効率化にもなると思いますので、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
それでは、以下から本編になります。
リサーチの進め方
リサーチを進める時には以下の4つのステップに分かれます。
(1)リサーチをする前段階のすり合わせ
(1)-a リサーチの目的の確認
まずリサーチを始める時には、「このリサーチを通じて何を知りたいのか。」を言語化することが超重要です!
リサーチでよくありがちなのは、上長や他のメンバーから「〜〜を調べて」とだけ依頼をされて、それが何の目的のために必要な情報かがわからないまま闇雲に調べて時間が浪費されてしまうことです。
そのため、自分が納得するまで色々な形で「なぜリサーチをするのか」を質問をしながら確認し、上長やメンバーと自分の考えていることがすり合っているかを確認しましょう。
(1)-b リサーチのフェーズを確認する
リサーチのフェーズには3つのパターンがあります。どのフェーズかによって調べるアプローチも変わってくるので、自分のリサーチの位置付けを確認しましょう。
①検討着手ステージ:企画の立ち上げ期や、プロジェクトの一番初め、全く知らない業界に参入することを検討するときなど、その業界の基礎知識や全体感を知りたい時
→業界レポートや、業界に関する解説本、記事をざっと読むなどを行うフェーズ
②仮説立案ステージ:領域の全体像がわかってきて、自分たちはどのような取り組みをするかなどを考える時
→業界の個別プレーヤの動きなどを調べて自社と他社の比較を行ったり、個別のプレーヤー同士の関係性などより細かい情報を見に行くフェーズ
③仮説検証ステージ:①ー②を経て自分たちが何をするかの仮説が見えたところで、自分たちの主張に根拠となる事実を補強したい時
→何を良いたいかは決まっているので証拠集めをするフェーズ
(1)-c リサーチにどれくらいのコストをかけるかの確認
リサーチはその時々に応じて求められるアウトプットが変わります。
以下の3つの観点で確認をするようにしましょう。
①スピード:いつまでにリサーチが完了していれば良いのか?
②網羅性:どれくらい幅広に調べるか?(自社だけ?他社も加える?他社は何社くらい?国内だけ?海外も?etc..)
③精度:どれくらい生の情報を取りに行くか?(とりあえずデスクトップで良い?ヒアリングをしに行く?etc..)
(2) リサーチの設計
リサーチをする時は、どのようなソースに当たるか、どの順番で当たるかを考える必要があります。
(2) -a どのソースを活用するか検討する
ソースには以下のようなものがあります。
ネットで調べられるもの(有料含む)
web記事
ニュース
レポート
統計データ
アンケート結果
ネットで調べられないもの
書籍
インタビュー
実際に現場を訪れる
社内の過去資料や同僚の知見がある人へのヒアリング
上記の中から今回のリサーチに必要な情報を調べるのに適切なソースは何かを洗い出します。
(2) -b ワークプランをざっくり作る
どのソースに、どの順番で当たるかを大まかに設計するためにワークプランを作ります。
かける時間とソースのざっくりした内容を箇条書きにする程度で問題ないです。
下の図ほどこだわる必要も無し
ワークプランの検討もつかない場合は、
一旦webで調べてみて、調べる方向性を明らかにする
メンバーや上長に「自分だったらどうやって調べるか?」を聞いて教えてもらう
3分考えてわからなかったら聞くのが良いと思います!
聞く時のコツとして、具体的にどのサイトを見るか?など細かく聞けるとなおよしです。
(2) -c アウトプットフォーマットをすり合わせる
忘れがちだけど1番大事なのがここです。アウトプットのイメージをフォーマットレベルですり合わせます。
すり合わせ方の観点としては下記の通り
使うツールはどれか?
スプレッドシート
ドキュメント
パワポ
どんなフォーマットになるか?
スプレッドシート
リスト作成?
比較表の作成?
論点表に内容を埋めていく?
ドキュメント
リンク元の情報を直張りするか?
情報を咀嚼した上で整理するか?
パワポ
規定のフォーマットに情報を埋めていくか?
パワポの一部分の表やグラフを作るための情報を集めるか?
伝えたいメッセージに合う画像を探してくるか?
上記の細かい部分を言葉ですり合わせるのが難しい時は、紙にラフのアウトプットイメージを絵で書いてしまって、認識がずれていないかを確認するのも有効な方法です。
(3)リサーチの実施
スタートアップにおけるだいたいのリサーチは「1.ネットで調べられるもの(無料)」と「2.知り合いを通じたインタビュー(無料・有償)」で行われるので、本記事ではその2つのそれぞれのコツをまとめます。
(3)-a ネットでの調べ方Tips
ツール
最初はGoogleで調べ始めます。
調べる領域によって良い情報が出るメディアを発見したら、そこのサイト上で検索をかけます。
媒体系:日経新聞、TechCrunch、PR TIMES、Newspicks など
DB系:Crunchbase、StartupDBなど
SNS系:Twitter、Facebook、Instagram、など
いけてるパワポ資料系:Slideshare, speakerdeckなど
スタートアップで働く人のナレッジ: note
Googleでの検索方法
業界のレポートなどを調べたい時は「XX PDF」でPDFだけがヒットするようにする
だいたい行政とかシンクタンク系のパワポ資料と、学者の論文が出てくるので目星が良さそうなのを2-3個読みます。
画像検索を有効活用して良いグラフやカオスマップを見つける
市場規模を調べたり、 業界のプレーヤーを調べたい時は「XX 業界 市場規模 推移」「XX業界 カオスマップ」などのキーワードで検索をかけた後、画像の検索結果に飛びます。
そこで良さげなグラフや図があればそのページをみに行く方が断然欲しい情報に素早くたどり着けます。
キーワード検索を駆使する
最初に全体像をレポートや記事を読む中で把握し、その領域の頻出キーワードや個別名を探し出す
例えばクラウドファンディングであれば「購入型」「寄付型」であったり、「Makuake」「CAMPFIRE」などの固有名詞のキーワードを知っていた方が「クラウドファンディング」だけで検索するよりもより詳しく、自分が探したい情報に出会える
スタートアップでよく使われる「GMV」というキーワードも、「流通総額」「取扱高」「売り上げ」など他業界では違う言葉を使っていたりするので、その領域で通常使われるキーワードを意識する
このキーワードを見つける力がリサーチ力と紐づくので、ぜひ意識して取り組んでいただけると良いかと思います!ただし、最後は慣れだと思います。
検索がヒットする期間を設定する
ある時期のニュースや記事、論文だけを検索に出したい場合、検索がヒットする期間を独自に設定することで同じキーワードでも出てくる結果が異なります。
Googleの右にあるツールタブ>期間指定無しを、1年以内や2013年の8月〜9月など様々な期間に変更することでできます
私はこの機能はかなり使います!おすすめです。
(3)-b インタビューのTips
インタビューは2つの目的で実施します。
調べたい領域の生の情報を手に入れる
ex.ネットでは出てこない現場の課題、プレーヤー同士の関係性、実際の会社の数字感(商品の価格、メンバー数、クライアント数、問い合わせ数など)
自分たちの「仮説」が正しいかを確認する
ex. こういったサービス・企画があったら利用したいか、これを実現するためにはXXの協力が必要と考えるが果たしてそうか、ネットではXX〜と言われているが、実際はXXなのではないか
そのため、事前にネットでのリサーチを十分に行い、当日はインタビューアジェンダを必ず準備するのは必須です。事前準備なしにインタビューをするのは悪手ですし、せっかく時間を割いてくださる先方にも失礼です。
インタビューアジェンダは一旦叩きを作り、チームメンバーや上長にフィードバックを貰うことをおすすめします。
インタビューアジェンダを作るときは「このインタビューは何が明らかになったら良いインタビューなのか?」に立ち戻って作ることを心がけましょう。
インタビューを実施する際は、基本的にこのインタビューアジェンダに沿って質問をします。とは言え、いきなり各論の質問をすると相手も構えてしまったりするので、まずはお互いの自己紹介や、その業界の基礎的な知識や全体像などを伺った上で各論に自然に入っていく(=自分が聞きたい質問に入っていく)と、相手も緊張がほぐれていて、たくさん話してくれます。
インタビュー実施後、議事録はその日中に成形しておきましょう。1日でも立つと細かなところを結構忘れてしまいます。
(4)示唆出し・共有
リサーチで集めた情報を集約すると、どんなことがわかるのか。このデータからは何が言えるのか、何が読み取れるのかをメンバーや上長とディスカッションします。
周囲とディスカッションする際に、リサーチをした側はリサーチのアウトプットをシェアしますが、このときは「事実」と「意見」をしっかり分けて発言するように意識しましょう。
周囲のメンバーはリサーチをしていないので、その発言が事実に基づいたものか、ただ発言者が考えたことなのが区別できないと議論を進められなくなってしまいます。
リサーチをする上で意外と大事なこと
上はあくまで王道のプロセスですが、ショートカットする方法は沢山あります。ぜひ頭の片隅にいれておいてください。
過去の誰かが調べた資料を探し当てる
過去の社内slackを遡って同様の議論がされていたり、その時のリサーチ結果や記事が残ってないか調べる
社内や知り合いでその領域に詳しい人と10-15分話したりチャットをして、リサーチのアタリをつける
その他参考文献・動画
OGP画像利用:Loose Drawing 様
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