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ano hi 番外編 シュウへ…

ano hi 番外編 シュウへ…

わたしは香里《かおり》
彼はわたしの事をカオと呼んだ
彼の名は修也
わたしは彼の事をシュウと呼んだ

シュウへ…
あなたがいなくなって
3年たった

あなたがいなくなった後
突然いなくなった喪失感
色んな後悔
日々の出来事で思い出す
彼とのシーン

涙が出そうになって我慢して
ひとりになったら、泣いて

頭では分かっているのに
肯定できなくて

何を食べても美味しくなくて

それでも、笑って仕事して
泣きながら、眠って

こんな事ではいけないと
気持ちを切り替えて

そーやって
毎日、毎日繰り返した

シュウ
やっと、最近
あなたの思い出を
泣かずに語れるようになったよ

結構時間かかったよ

シュウはそちらで楽しんでる?
あなたの事だから
まわりを巻きこんで楽しいこと
してるんだろうね

今日は
シュウと一回だけ旅行に行ったことを
思い出しながら話しできたよ

あの日のこと

シュウが
「カオに見せたい所あるから
俺が予定立ててイイか?」
と言って計画してくれた
最初で最後の旅行

わたしはシュウの好きな
たまごサンドとコーヒーを用意して

シュウと電車、バスに乗り継いで

ふたりで電車やバスに乗ったのも初めてで
スゴく新鮮だった
普段しないような話したり
窓から見える景色見たり
シュウのむかし話で笑ったり

うれしくて、はしゃいだな

ちいさな遊園地に行って
サンドイッチ食べて

観覧車乗って
1番上に着いたら、キスした

ふふっ
なんだか、高校生かよー
って思ったりしたな、あの時

イイ大人のふたりが
遊園地の乗り物で楽しんだ

子どもを連れてない
大人ふたりでくるところじゃないよね
 そーでもなんじゃない?
 チケット渡す時、スタッフの子
 ちょっとびっくりした顔してたけど
 俺たちが楽しんでたから
 帰る時、笑顔でありがとうございました
 って言ってたよ
シュウー前向きー
わたし、恥ずかしかったよ
 楽しくないの?

ちょー楽しい
 さっ、次、あれ乗ろう

ふたりで子供みたいに
大声だして楽しかった

カオ、ちょっと歩こう
 うん
ここから、海見えるよ
 ホントだ

綺麗な夕日だ
 うん、綺麗

言葉なんていらなかった
手を繋いで
陽が沈むまで
黙って見てた
きれいだった

遠くで閉館のアナウンスがあって
慌てて走った

タクシーで旅館まで行った

すごい、千と千尋の神隠しみたいだ
 ここ好きそうだと思って探した
うん、スゴくイイよ
 良かった
 カオはわかりやすいな
 直ぐに顔にでるから
今日は、一日中機嫌がいいでしょ〜

部屋で夕食、食べて
温泉入って、部屋でまったりしてたら

カオ、寒いけど散歩行こう
ちょっと毛布拝借して持って行こう

どこ行くんだろ?
真っ暗だし
携帯の灯りでゆっくり歩いた

波の音と潮の香りがしてきた

この辺がいいかな?
と、毛布を敷いた

ここ寝転んで空見よう

ふたりで寝転んだら
空には満天の星
潮の香りと波の音

きれい
 だろ
もしかして色々と下見したの?
 した
シュウらしい
 だろ
ありがとう
 うん
あっ、流れ星
 早っ、落ちた

次の流れ星に願い事しよう
 そうしよう

なんだか、彼の気持ちがうれしくて
泣けるぐらいに愛しいと思った

ずっとこのままでいたかった
暗くて寒くて暖かい
あの日のあの時

体が冷えて、温泉入りなおして
じゃれあって
布団に入って
わたしの知らないシュウの事を
教えてもらった

子供の時から今日までの
シュウの色んなこと
わたしの色んなこと

明け方までお互いのことを
ずっと話してた
ふたりで思い出の交換をした

シュウとこうして居られるだけで
しあわせだった

いつの間にか眠ってた…

カオ

また薄暗いのにわたしを起こすシュウ

カオ起きて
ここから、朝日が昇るのが見えるよ

 ホントだ

泣いてる?どうした、カオ
 朝日がこんなにきれいだったんだと思って
鬼の目にも涙だな
 鬼、違うわ〜

(だだ、うれしかっただけだよ)

同じ物を見て
同じように感動して
それを共有できる事が
どれだけしあわせなことなのか
あの2日間が
ふたりだけの時間が
どれだけ特別なものだったか

想い出は色褪せるって言うけど
わたしの頭の中にある映像は
色褪せないよ
あの時の
気持ち…
音…
色…
は、あの時のまま
思い出したらあの時にもどれる

わたしそのうち
そちらに行くから
その時は一緒に遊んでね
待っててね
シュウ

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