桜の散るころ、風を読むキミ
桜の散るころ、風を読むキミ
桜の散る頃に
思い出す映像がある
僕の趣味はカメラで
その春は
花見シーズンを逃して
桜が散りかけの時
写真を撮りに行った
その日は
少し風のある
肌寒い日だった
人もまばら
もう、桜も終わりだね
と残念そうに帰っていく人たち
そんななか
女の人?
少女のような華奢な子が
座って何かを拾ってる?
彼女は
桜の花びらを
集めてた
大事そうにそーっと
手持ちの小さなカバンに入れていた
気になって
桜の写真を撮るふりをして
ファインダー越しに見ていた
そのあと
彼女はカバンから
両手いっぱいの花びらを
掴んで放り投げた
ひとりで
さくらのら花吹雪
咄嗟の行動に
僕はシャッターを押していた
ピンク色の花びらに包まれる
つぎに
彼女は
じっと動かなくなった
なに?どうした?
と、次の瞬間
大きな風が来て
彼女のまわりに散らばった花びらが舞った
それに合わせて
彼女はクルッとふわっと一回転した
僕は
引き寄せられるように
その映像を残したくて
連写していた
彼女は風を読んでいた
たぶん…
そうだと思う
撮った画像を見てみた
きれいだ
そこに
花びらを纏った彼女がいた
僕に気づいた彼女が
近づいてきた
色白で華奢で、か弱そうに見えた彼女が
今、私の写真勝手に撮ってたよね
ちょっと見せて
と強い口調で言った
オロオロしながら見せると
怒り口調だった彼女も
写真が気に入ったのか
きれいに撮れてるね
あたしじゃないみたい
ごめん勝手に撮って
気に入ったのなら
現像して渡すよ
どこに送ればいい?
うーん
じゃあ、
来年、またここで
同じ頃に
桜の散る頃に
えっ?なんで?
そんな先でいいの?
うん!楽しみにしとく
じゃあ、キミ、名前は?
あたし?
うーんと、ハルで
それって、本名じゃないよね
分かった?
でも、こんなとこでこんな事してるの
私ぐらいだから、見つけやすいでしょ
確かに!
じゃあ、ハル、また来年会えるね
あっ、もう、あたし帰る時間だから
じゃあね!あたしのカメラマンさん
来年ね〜
そう言って
あっさり、さよならした
「あたしのカメラマンさん」
って言葉がなんだか
うれしいような、恥ずかしいよーな
彼女の専属カメラマンの気分だった
そのあとも
一年後を待たずして
何度も同じ場所を訪れたが
偶然は訪れなかった
約束の一年後
桜の散る頃
同じ時刻に行ってみたが
彼女は現れなかった
あれから、3度目の春が来たけど
会えていない
今年も桜の散る季節
風のある日
その景色を撮りながら
ハルは元気にしてるのだろうか?
いつかは会えるのだろうか?
…と
今年も
桜の花が散るころ
風を読むキミを待つ僕
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