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『本日は、お日柄もよく』を読みました
わたしの言葉が日本を変える!?
スピーチの数だけ、ほろりと涙が出ていました。
なんて書いてある帯に踊らされて手にしました。
表紙もこんな感じでお茶目なのです↓
スピーチライターという仕事、ホントにある!!
人前で話すのが根っからの苦手。そういう人はいっぱいいるはず。私もそう。学生時代から「いかに人前に出ないで済むか」を裏テーマにしてきた。
だが、人生そう甘くない。
お偉いさんがズラリと人が並ぶ中、私の声だけが響く会議。初対面の人ばかりが集まった集いでの自己紹介。果ては何を勘違いしたのか1時間半、壇上で事例紹介をしてほしいという話もあった。
卒倒である。
そして、もっと早く知っていればと思ったのが、この本だ。初版は2010年。11年前だ。主人公はOLの二ノ宮こと葉。敏腕スピーチライターと出会うことで、自身もその道を歩んでいく物語だ。
※ここからはネタバレありです。ご注意ください。
そして、このスピーチライターという職業は、フィクションじゃない。先のオバマ大統領の選挙戦で一躍注目された職業で、日本国内でも活躍されている人がいる。
スピーチは冒頭が大事
この本で一番に学んだのはスピーチの言い出し。決まりきった常套句を言えばいいものと思っていたが、そうではない。話を聞いてもらえるかどうかは、話し始めで決まるというのだ。
物語の序盤、こと葉が片想いしていた幼馴染の結婚式が見せ場になる。悪いスピーチ、お手本になるスピーチが登場し、ナルホド! と私も膝を叩いた。
会場がざわざわしていたら「お静かに」とか咳払いせずに、ただ黙っている。そうすると静まる瞬間が来るから、その時に話し始めるというのも納得がいった。
ストーリー展開のテンポもいいし、登場人物の書き分けもしっかりされているし、この先どうなるんだろうと思わせてくれる。
純文学ではな痛快なエンターテイメント小説
ただし、魅力的とされるスピーチの熱量は徐々に弱まっていく感はある。スピーチの数だけ私は泣かなかった。もっとパンチあるスピーチが欲しかったというのは、デスっているのではなく刺激中毒の私には「この程度じゃ効かないぜ」なのである。
こと葉は会社で大役を勤めることになったのに、それを途中で投げ出して敏腕スピーチライターでこと葉の師匠になる久遠久美の事務所に”転職”したのも、私なら一大プロジェクトが終わってから辞めるのが筋じゃないかな〜とお局様的な視点からも、やり切る成功体験が実力になるという精神論からも、もったいないと思った。
後半は選挙戦になるのだが、選挙時のスピーチ合戦にもテクニックが必要なことがわかったけれど、厚志くんの奥さん、恵里ちゃんが選挙中に倒れて、入院、流産という展開も、あからさまかな。
こと葉のスピーチライターとしての素養、腕をあげていくまでの過程にあまりページを割いていないので、”弟子入り”してからすぐ大活躍したり、ライバル視していた和田日間足(わだかまたり)のことを、ツンデレ的に好きなんだろうなとは思っていたけれど、まさかラストで結婚してしまうとは!
出来すぎた展開だが、エンターテイメントと割り切ればホームドラマをみているような安定感がある。展開のリアリティーを追求するのではなく、届けたいのは「言葉のもつ力」。それがわかると、自分の思いを伝える、声に出すことをためらってしまう時に、ポンと背中を教えてくれる本だと思う。
スピーチ。
今のところ予定はないけれど、言葉の選び方一つで人の心を動かすことができることを、今一度思い出せてもらえる。
スピーチだけじゃなく、普段の話し方にも通じるかな。
頭じゃなくハートから話せるようになっていきたい。
作者/原田マハ 出版社/徳間書店 43W×19L×315P 章立て/あり(1〜20のナンバリング 1章あたり15〜17P)