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書くことが好きなわけじゃない。生きるために書いているんだ

書かないと生きていけない

そう断言できる。

先日、みずのけいすけさんの「こたつラジオ」にお邪魔したとき、

健やかに書き続けるために、心がけていることは何ですか?

という質問をいただいた。逆だと思った。

書かないと健やかでいられないのだ。

私には、感情をためこみすぎると、調子が悪くなるようなところがある。

とはいえ、考えていることすべてを家族や友だちに話して、外に吐き出すのは難しい。口にはできない繊細な気持ちが多すぎる。

だから、書く。

悲しいこと、つらいことの多い世の中を生きる術が、私にとっては「書くこと」なのだ。


「書くこと」に生かされてきた

明日なんか来なければいい、と生きるのを諦めたくなったとき、私を助けてくれたのは「書くこと」だった。

◆うつ病がひどいとき

高校2年生のときに、初めて「うつ病」と診断された。

最悪だった。

家族に肩を借りなければ、トイレにもお風呂にも行けない。食事のとき、お茶碗が重たくて持てない。何とかご飯を口に入れられても、味が分からない。

布団の中で天井を見上げながら、ときおり襲ってくる「死にたい願望」と闘い続ける毎日だった。

もう、生きているのか死んでいるのか分からなかった。

それでも、薬が効いてきたのか、少しずつ動けるようになり、ブログを投稿するようになりました。

「誰かに何かを伝えたい」というよりは、自分の中にある、よどんだものを吐き出したくて、無心で書いてた感覚です。

やがて、同じようにうつ病と闘う人たちからコメントがくるようになりました。

今でも覚えている。当時大学生だったお姉さんと、30歳くらいのお姉さん。

彼女たちもそれぞれブログを書いていて、お互いにコメント欄で励まし合った。

この得体のしれない苦しみと闘っているのは私だけじゃない。家族や友だちには理解してもらえなかった気持ちに、共感してくれる人がいる。

ブログを書くことで生まれた人とのつながりは、間違いなく生きる力になりました。

◆離婚の決心がつかなかったとき

なかなか離婚の決心がつかなかったときに、背中を押してくれたのも「書くこと」でした。

当時は、まだライターの仕事はしておらず、雑貨店の販売員としてフルタイムでパートをしていました。

出勤する前や、娘を寝かしつけたあと。ちょっとした時間を見つけては、夢中で作詞・作曲していたっけ。

多くの歌詞は、離婚に向けて行動を移すまでの気持ちの揺れがベースになっています。

買い替えてしまうことは難しいことじゃないけど
それじゃ全然意味がないから
大切なものは時間と一緒に色あせてしまうなんて
そんなの悲しすぎるから

オリジナルソング「めがね」より

作詞によって、自分自身の気持ちを整理できた。

あと、書いた曲をライブで人に聞いてもらうことで、ありのままの感情を肯定できるようになり、生きるエネルギーがわいてきました。

◆娘の不登校に悩んでいたとき

2023年、当時小学校3年生の娘が不登校になり、自分一人では抱えきれない不安や葛藤を、noteへ綴るようになりました。

温かいコメントをもらったり、オンラインで話を聞いてもらったり、娘も含めてランチに誘ってもらったり、親子共々本当に救われました。

ライターの仕事では、クライアントや読者のために文章を書く。基本的に自分自身を前面には出しません。

だから、自分のために書くのは身勝手なのではないかと、モヤモヤしていた時期もありました。でも、そんなことはないみたい。

そのとき感じたことを素直に書くたび、周囲が変化して、私の心が動き、生きる世界がいい方向へと変わっていって。「自分のために書いてもいいんだ」って思えるようになりました。

書くことは生きること

未来は誰にも分からない。けれど、書き続ける自分の姿はイメージできる。

私にとって書くことは、仕事であり、趣味であり、人とつながるための手段です。特に「書いて誰かと心を通わせること」が、生きるうえで重要なポイントだと思っています。

私の知っている「衣食住」の横には、「書」という漢字が並んでいる。そのくらい、なくてはならないものなんだよね。





あとがき

書くことが好きかどうか聞かれたら、ものすごく困る。

だって「書くの楽しい!」って思ったことがないんだもん。

呼吸するように無心で感情を吐き出しているか、苦しみながら言葉を探しているかの二択だ。

内容によっては、書き終わったあと床に寝そべって、2~3時間放心状態のときもある。

それでも、書くことをやめられないのは、なんだかんだ「好き」なのかもしれないなあ。




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春野なほ|エッセイスト・ライター
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