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曖昧、

 恋がしたい、恋がしたい。最悪。

 グロい感情が掻き乱す未熟な6月。初期衝動に煽られ、脳内麻薬の青さに気持ちよくなって、沈むように嵌ってゆく愚かさ。恋くらいで人生変えたくない。
「なんだかおとぎ話みたいだね。」
そうやってはにかみながら、またきみは誤魔化してみせる。ずるいよ、ずるい。わたしは不器用だし、すこし天邪鬼すぎたかな。


 手のひらを震える光にかざしてみた。きみにはどんな風景が見えるのかな。

 僕には、わからない。

 淡い光の交差点で、今日もつい手を引っ込めてしまった。僕はうそがうまくなったんだ。
 一寸先の残光を、空間を越えられない。指を咥えて眺めることしかできない。どうしたって触れることができなかった。僕はさみしくてたまらなかった。

 ずっと、曖昧でいいから、幸せが続いてほしい。
ただそれだけ。

 君がいなくなって、ぽっかり同心円上に広がってゆく孤独に、夏のにおいが通り過ぎた。
 なんだか感情も時空も甘ったるいショートケーキのようにぐちゃぐちゃに混ざって、ファズで歪んでしまったようで、わたしはこころをうまく保てずにいた。こっそり太陽に手のひらを合わせてみたりした。3歳の時の記憶がフラッシュバックして、白詰草に埋もれているような気分がやけに心地よかった。

 ただ在るだけ。互いのすきな色が交わる集合図のなかで、波形を重ねている。その事実が僕にとってあまりにも愛おしかった。柔らかい布団に飛び込むより、たいせつな音楽のなかにいられるときが僕にとってなによりもほんとうに、純粋に幸せだった。

 どんな風景にも重ならない、あの地平線に突き刺さっている鉄塔をなぞる。いっしょになぞりたかったな。僕とわたしと、きみとあなたと。

 翠色の海にゆらゆら浮かんでいる。
 ゆっくりと重たく沈んでゆく。
 28℃。


 きっと僕とわたしは違う空で生きているんだよ。信じて、黒い感情に支配されないでよ。泣かないで。そんなに目を腫らしながらわたしのことを睨まないでよ。

 ねぇ、わたしに愛憎を向けないで。


 ひらいて、わたしの背中。

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