書き留めることもなく、雨天の朝。
自他公認の夜型人間である私が、めずらしいことに朝早く起きた。といっても五時半より二分ほど手前。時計の秒針もこの時間に見られることなどほとんどないから、一瞬吃驚して立ち止まったように見えた。きっとクロノスタシスというのはこれである。
さて、早く起きたからには優雅な朝を過ごさねば数時間後の私がきっと後悔に嘆くだろうというので、何をするか毛布に包まり考えた。
学生の頃は朝の六時には服を着て散歩をするルーティーンがあった私である。外に出て歩いてみようかと思いついたが生憎今日は雨。今日は窓の内側にいた方がよさそうだ。
ではラジオ体操か?いやいや、訛りきった体に寝起きの頭で、あのとびきり溌剌とした声を聞いてしまったら、きっと私はどうにかなってしまうだろう。
ではあたたかいコーヒーを飲むのはどうだろう。コーヒー、といっても幾分年齢に追い付けない私の舌では市販のスティック・カフェオレがいいところなのだが。
だけど、うん。そうしよう。体を温めようじゃないか。
と、ここまで思いついたところで、私は本の虫であることに気づく。なんとベッドの端に座りこの文章をぽてぽてと打っているではないか。いったいコーヒーはどうしたものか。
まあ、でも。
こういう朝の過ごし方、けっこうアリじゃないか。
誰かが雨戸やカーテンを開く音がする。微睡みの最中に降る雨音が町を起こしてゆく。
これを書き終えたら(打ち終えたら?)、先日読んだ本のように、窓を開けて空に向けてことわりを入れよう。
「本日も晴天。」
「ここに約一名、今日もおります。」