教育改革のソフトとハードの違い
学校を取り巻く改革はいよいよカオス化してきました。
- 学習指導要領改訂
- 高大接続改革
- アクティブラーニング
- 教員の変形労働制 など
一体どこから手をつけるべきなのか、何をすればよいのか迷っている学校が大半だと思います。(そう言う私もよくわかってませんw)
改革の話をする前に前提として学校の環境をご説明します。
先日、私が学校の先生のコミュニケーションについて話す機会があり、そのときに作ったスライドですが、右側の生徒(保護者)と先生のコミュニケーションと言うところが一般の人から見えている部分で、左側の先生たちのコミュニケーションというのが一般の人から見えない部分になります。
当たり前ですが、なにか授業をするにも、行事をするにも、企画立案する段階が必要であり、そのためには校内での議論を繰り返し、方針を決めて実行準備をし、ようやく生徒や保護者のもとに届くのです。
よって、生徒や保護者として学校に携わっているだけであれば、学校のことで見えている部分は学校全体の業務や活動の中の約1〜2割程度でしょう。
要するに、学校は生徒や保護者として見ている部分と、学校組織の中で抱えている部分には大きな隔たりがあります。それは、一般の企業について、社員が知っている部分とそのお客様として知っている部分に大きな隔たりがあるということと同じです。
最近、いろんな新しい教育について提言がありますが、多くがこの学校の外の人からも見える部分に集中しているように思います。
- アクティブラーニング
- アダプティブラーニング
- STEM学習
- 英語4技能
- 探究学習
- リーダーシップ教育
私はこれらのことをソフト面と呼んでいますが、上の図でいう右側の話であり、そこだけを改革しても、その準備の段階でバグっていたら機能しないことになります。
一方、文科省などが提言している、教員の働き方改革の分野でいうと、上の図でいう左側の問題であり、こちらはどちらかというとOSもしくはハード面の改革と言えるでしょう。society5.0に対応する環境整備などもハード面での整備になります。
要するに、ソフトを支える基盤のようなものです。
私は企業と学校とで働いた経験で見てみると、今の環境(エンジニアがたくさんいて、海外に拠点を持つ人とも共同しながら仕事をしているような環境)をOSで言うところのWindows10(最新OS)とするのであれば、学校のOSはWindows98もしくはMe、良くてXPと言ったところでしょうか。
- 紙ベースの伝達様式。
- 出張や有給の申請は未だに紙、ハンコ。
- 毎日出社、朝礼して伝達。先生たちは手帳にメモを取る。
みたいなことをしている学校がまだまだ多くあります。(もちろん進んでいる学校もたくさんあります!が、色々な学校を回って見ていると、結構まだこれが蔓延している…)システムがあっても、古くてとてもとても効率的とは思えない、みたいなものも多々…(某大学院の管理システムを見ても然り…)
私はこれを「みどりの窓口で新幹線の切符を買うようなものだ。」と思っていますが、スマホアプリを使えば今や新幹線のきっぷは3分で買えます。でもみどりの窓口で買うのは、まず最寄りのみどりの窓口まで行って、行楽シーズン前だと長蛇の列に並んで、きっぷを購入してまた帰る。下手すれば2時間ぐらいかかる仕事になります。
3分と2時間ですから、そのムダは明らかなのですが、なんだか怖いという理由で?(クラウドは危険だとか本当に言われます。)まだ効率化に向かえない人たちがたくさんいます。
そんな旧式のOSなんですが、新しいソフトウェアを扱うように国や自治体、社会からの圧力がかかってきており、その挙げ句にこんな事になってしまったのだと思います。
「もう、やってられない」 中教審で現場教師の本音訴え
https://www.kyobun.co.jp/news/20191004_04/
これ、悪いのは誰でしょうか?
私は誰も悪くないと思っています。
学校はなるべくしてこうなってきているわけで、誰もサボっていたわけでもありません。
私が知っている限り、先生方は身を粉にして働いています。
学校という環境が誰か株主のような圧倒的なステークホルダーがいるわけでもなく、業績が不振でも説明責任があるわけではありません。(その前に学校の業績とは何なのか?というところもあります。)
閉鎖された空間の中で権力を持った人たちは、共感能力が落ちてしまうということが研究結果でもわかっているそうですが、予算踏襲が正であった学校が、自然の流れで今のOSアップデートがされてこなかったんだと思います。
文科省だって悪気があってソフト面での改革を進めているわけでもありません。社会からは学校は100年遅れていると言われ続けてますから、焦ってます。いろんな省庁からの圧力もありますしw
でも、上の記事で訴えた校長先生のお気持ちは、ごもっとも。
全国の先生方の代表的な発言だったりもするでしょう。
文科省は「ゆとり教育」のときと違って「一切教育内容を減らさない」と公言してますから(世間の皆さんに叱られたのが未だに深い傷になっているわけですね。)、「今までのWord、Excelだけでなく、Illustratorも使ってね。他のソフトウエアは使えるの当たり前だから。」と言っているのと同じです。しかもOSはWindows98のまま。そりゃ先生たちにはllustratorの理解と、自分たちがそれに対応できるスキルをまずは身につけなきゃいけない。大事だろうからそれはやらなきゃいけないと思っている。でもそれにはすぐには対応できないので、まずは勉強をさせてほしい(そういう時間をください)と言っているのが上の記事の校長先生のご発言となったわけです。
ただでさえ、ブラックで働き方改革を進めろと言われているのに、研修する時間も作らなきゃいけない。じゃあどうやって?というところに、これという対策をとってくれるわけでもない。「やってられるか!」となったわけですね。
要するに、「メモリは減らすけど、最新ソフトを扱ってパフォーマンス出してよ。」と言われたPCがフリーズしてしまった状態です。
なので、できればソフト面での改革を提案して頂く場合は、ハード面のバックアップをセットで提言してほしい。そうじゃないとリアリティがなくて、また固まってしまうかと。(もちろん、ちゃんと提言してくれている人たちもいます!)さらに、ハード面もやるぞ!と言っているのは文科省ぐらいですから、本気で改革を見据えているのは文科省ぐらいかもしれないですね。(やり方が正しいかはさておき…)
ということで、ソフトウエアの改修をする前に、ハードやOSの改修が必須なんだろうなと思い、マネジメントのお勉強中。
お勉強が終わったら、いよいよ口だけじゃなく、どういう形にせよ、行動しないといけませんね。
はい。
追伸:
私が言っているOSがWindows98というのは、先生個人のことではなく、組織として整理されていない状態を指しています。先生たち一人一人の能力とう意味では決してありません。