好きとは告げなくとも。
#曲からストーリー 参加します。
参加要項は確認したのですが、よろしくない点がありましたら(企画のPJ さま)ご教示いただければ、と思います。歌詞引用の著作権問題は把握しておりますが、拙稿で歌詞引用するのは経験がないので。
曲は、少し懐かしFINAL FANTASY Ⅸエンディング曲『Melodies Of Life』。名曲なので、もしこの曲を知らない(若い世代の方、自分はTVゲームとは無縁と思うなどの)方がおられましたら、曲だけでも聴いていただきたく思います(拙稿スルーでおkですから(ヲィコラマテ主旨はどうした、企画さまの。自分よ^^;)
「♬~♬」
傍らの人から、珍しく鼻歌が聞こえてくる。
「珍しいな。ご機嫌なのかい?今日は」
「ふふ。ご機嫌というよりもね、幸せだって思ったの」
見慣れた横顔、その笑顔は初めて見るものだった。
俺たちが出会ってから、もうすぐ五年が経とうとしている。記念日とかは気にしない質(たち)だから、去年も一昨年(おととし)も、そして多分今年も、取り立てて「交際記念日」のデートや食事はしないだろう。
私ね、この曲の、このフレーズが好きなの。少し切ないのだけど。
独り言のように、彼女が告げる。
「なあ……不安なのか?俺たちのこと」
歌のフレーズ、その言葉の断片を聴き取り、俺は彼女に問いを投げた。
「違うわ、そんなんじゃない。むしろ逆なの」
「逆…..なのか?」
「そう。ねえ、覚えてる?私たちが付き合いはじめた、きっかけ」
切欠。俺たちが恋人同士と呼べる存在になったのは、些細なことがはじまりだった。五年前の新入社員歓迎会。タクシーが中々掴まらなくて、一台のタクシーに同乗したこと。それが最初の「2人の時間」だった。
「きっかけなんて、あってないようなものでしょう。そんなことより、
大切なものは他にあるわ」
今日の朝は目玉焼きが上手く焼けた。
あなた、旨いって言って喜んで、トースト1枚おかわりまでしたわよね。
昨日まで蒸し暑かったのに、今日は風が涼しい。
だから、久し振りにふたりで夕飯の買い物にこれた。
久し振りだったから―
「手なんて繋いでるしね。照れ屋さんのくせに」
くすくすと小さな笑いを零しながら、彼女はそう言って微笑んだ。
「だってよ….たまには、しなきゃって思ったんだよ」
「しなきゃって?手つなぎのこと?」
「ってか、恋人らしいことだよ」
俺の答えを聞いて、彼女の瞳が一瞬まん丸に見開かれた。
その後で、瞳が微笑みの形に変わる。
「無言実行タイプのあなたらしい。いいのよ、それで。
言葉なんてなくたって、ちゃんと伝わってる。約束なんてしなくても
会えるでしょう、私たち」。
ああ。そうだな、そうだった。
でも、それは―
「おまえの寛容さに甘えてばかりじゃダメだって思うんだよ。
伝えようとしなきゃ、何も伝わらない。気持ちを持ってたって
俺ひとりが納得してるだけじゃ、独り芝居のようなものだろう?」
そう告げた俺の言葉に、彼女は嬉しそうに笑った。
「それじゃあ、明日はご馳走にしますかね。俺も手伝うからさ、
よろしくお願いしまっせ、シェフ」
「嫌だ、誰がシェフよ。……ま、いいわ。あなた専任のシェフ、
拝命しました。買い出しはよろしくお願いします、オーナー?」
なんでオーナーなんだよ。
だってあのマンション、あなた名義だもの。
はは。なるほどな。ま、なんでもいいや。
そうよ。ふたりで歩いていくこと、それが一番。
そんなとりとめのない会話を交わしながら家路を急ぐ。
今夜は、初デート記念日の一日前。
本番は、明日だ。
明日も特別のことはなにもない。平凡な一日を俺たちは過ごす。
平凡という、掛け替えのない、2度とは来ない、一期一会の時間を。
好きとは告げなくとも。
―想いはいつもきみの側(そば)に―
++fin++
拙い拙稿は以上です。本文1401字。千字以内に収めたかったのですが,少々冗漫になりました(;^^A ご笑覧賜れましたら幸いです。PJさま、素敵な企画を立案運営くださり、ありがとうございます。この場を借りて御礼を申し上げます。みん俳さま にも御礼を申し上げます。
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