【シロクマ文芸部】暦たちの想い
秋が好き、冬は嫌い。
きっぱりとそう言われてしまった。
嫌われたのなら、仕方がないな。
私はそう思った。私は極月、冬の真っ盛りなのだから。
どうしようもないよ。私は冬なんだから、秋にも春にも、勿論夏になんかなれない。
私はそう告げた、声の主、その存在に。
違う、そうじゃないってば。
答えが返される。彼女の名前は長月。秋の初めだ。
じゃあ、どうすればいいのかな?
そう告げると、長月は言葉を紡いだ。
極月、12月が嫌いだって言ったのはね、抱き締められないんだもの、あなたを。だって、温めたら溶けちゃうでしょ?あなた。
ああ、そっちだったのか。ごめんね。私は冬、雪や氷でできているから、熱が伝わると溶けるんだよね。それはどうしようもない。変えようがないんだ。季節はただ巡るだけ、その季節だけ存在するものだから。
ごめんね。でも伝わってるよ、長月の気持ち。一緒にはいられないけれど、あなたが秋を飾ってくれるから、神無月が来て、霜月が来て、私、師走・極月が行くことができるんだよ。
私の言葉が届いたのか、秋風が木々を揺らす。もうすぐ樹は秋色を纏うだろう。それが散り、地面が秋色に包まれた後が私の出番だ。それまでは、長月が起こす爽やかな秋風を感じていよう。
今は世界の奥底で眠る冬の私は、密やかにそう思っていた。
拙稿題名:暦たちの想い
本文字数:540字 原稿用紙一枚半相当
この短編は、以前にX(Twitter)で140字ストーリー、暦物語をハッシュタグで綴るという試みがあり、その時の記憶をヒントにしております。
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