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高校受験の話

私の高校受験は、怒涛でした

というのも、高校受験の10日くらい前に
父の転勤で稚内へ行くことが決まり、
急遽、稚内で高校受験をすることになったからです


父の転勤の兼ね合いがあったので、
万が一、父が転勤になったとしても
どこの高校でも入れるよう、
成績と内申点だけはそれなりにキープしていました

なので、その点での不安はなかったです
(よっぽどの都市部でない限りは)

ただ、
中学校でとても仲が良かった友達と
ずっと同じ高校進学を目指していて、
長期休みの塾の講習も
ずっと同じクラスで頑張っており、
「高校に入っても遊んだりしたいね〜」
と約束していたので、
「私は何のために今まで頑張ってきたのか どうして友達と同じ高校に行けないのか」と
両親の目の前で突っ伏して泣いたのは覚えています

とはいえ、
両親には私を室蘭に残して
稚内へ引っ越すという選択はなかったので、
泣く泣く稚内の高校を受験することとなり、
受験も稚内の高校で行うということになりました

当時の中学校の先生は
すぐに集団面接の練習や
(集団面接がある高校でした)
受験先の変更の手続きをして下さって、
本当にお忙しい中、ご尽力いただいて対応して下さったので、今でも感謝しかありませんね

担任と副担任の先生は
「普段通りでいれば絶対に大丈夫だから。変に良く見せようとしたり、力を入れる必要はないから。落ち着いて受験しておいで」
と送り出して下さいました

ただ、
最初から目指していた志望校でもなく、
ほぼほぼ行ったことがない稚内という土地で
突然受験しろと言われて、
わたしの心は荒くれのささくれだっていました

「落ちる気はしないけど、受かってもまったくもって嬉しくない」
と、完全にふてくされちゃっていました
(このふてくされ方は、今も大して変わらないかもしれない)

筆記試験の当日
当然ながら知る顔が周りに一人もいなかったので、
「とにかくやることだけやって、明日の面接に備えよ」と静かに試験に備えていたら、
後ろの席に座っていた子に
「あの、どこの学校から来られたんですか?」
と声をかけられました
私と同じようなセーラー服を着た、
色白で目が二重でぱっちりとした、
とても綺麗な女の子でした

この子、めっちゃ可愛いんだけど……!
なんなの?天使とか女神の類なの!?

女神のあまりの可愛さに、私は面食らいました

なんとか努めて冷静になって
「えっと、学区外の室蘭というところから来ています。父の転勤で春から稚内に住むことになったので、ここの学校を受験することになったんです」
と私が答えると、
「そうなんですね!実は私、稚内市内ではあるんですけれど、郊外の中学校から来ていて。誰も知っている人がいなかったから、ちょっと声かけちゃいました……」
とはにかみながら話してくれました

そのはにかみも美しすぎてクラッとしたのは内緒(笑)

そっか、
学区内とはいえ、
必ずしも同じ学校から何人かで
受験しているわけではないんだな

知っている土地だろうとそうでなかろうと、
知らない人ばっかりだったら誰だって心細いよね……
私もそうだしね
と思って、
「私も知り合いが一人もいないから、話しかけてもらえて嬉しいです。お互いに頑張りましょうね〜」 と声をかけたら、
女神は嬉しそうに笑ってくれました

ふてくされ気味でささくれた気持ちが、
少し和らいだのを覚えています

知り合いではないけれど、
知らない人の中で心細さや不安を抱えながら
受験に挑む同士が後ろの席にいて、
私も正直ホッとしたんですよね

私だけじゃないんだな、って

それまではずっと、
いろんな思いが入り混じった
「なんで私だけが」という気持ちが強かったのですけれど、
なんかそういうわけでもなさそうだぞ、と腹に落ちたら、荒くれもささくれもスーッとひいていった感じです

昼休憩のお弁当の時間も
女神と一緒に過ごして、
「この席の並びでよかったね〜」
って笑って話しながらお弁当を食べました
(この時の私のお弁当は、宿泊した旅館の方が作って下さいました。「頑張って下さいね」ってお弁当を渡してもらったことも忘れられない)

すべての筆記試験が終わった帰り際、
後ろの席の女神から
「四月に同じ制服で会えるといいですね」
と言われました

その時に
同じクラスじゃなくてもいいから、
またこの子に会えたらいいな
合格して、また会いたいな
稚内に来るのも悪くないな

って、初めて思いました
(単に女神に召されたチョロイ人)

次の日の集団面接の日
帰りの列車の関係で、
私は一番最初の組の集団面接でした

昨日の女神様は見当たらず、
また知る顔が一人もいない状態になりました

集団面接の練習はしたけど、ちょっと不安だな…
と思っていたら、

「緊張しますよね〜、一緒に頑張りましょうね!」
と、昨日の女神とは違う、おしゃれなブレザーを着た、社交的で笑顔の素敵な女神が話しかけてくれました

……稚内、女神多すぎじゃない??
そういう土地なの、稚内は???

って思いましたね(笑)

その女神は同じ集団面接の子だったのですが、
すごく感じよくハキハキと話していて
「この子は間違いなく受かるな」
と思いながら、私は面接を受けていました

集団面接が終わったときも
「お疲れ様でした〜!緊張しましたね〜!」
と女神が声をかけてくれて、

四月からこの高校に通うことになっても、
なんとかなりそうな気がする
多分受かるけど、受かるといいな
高校来るの楽しみだな

と思えました
(女神の力は偉大だし、私はチョロイ人)


後日談になりますが、
私も女神達も無事に合格を果たし、
筆記試験の後ろの席の女神に至っては
なんとまぁクラスが一緒でした

入学式で再会したときには
「同じ制服で会えてよかったね!しかも同じクラスで嬉しい!!」
って、お互いにものすごく喜んだのを覚えています

2年生でクラスが離れてからは、
進路も友達のグループも少しずつ離れていってしまって女神とは疎遠になっちゃったんですけれど、
あの後ろの席の女神に出会えたことは、
私の中で大きなターニングポイントになったなと思うのです


結果論でしかないのですが、
私はこの稚内の高校で
自分の人格に関わる部分を、
ものすごく良い方向で育ててもらいました

通った高校の学力云々のレベルはともかくとして、
人として生きる上での大事な基礎の部分は、
ほぼここで学んだと思います

そして
40歳を超えてきた今でも
真剣な話から脈絡のない話を延々とできる友人たちができました
(友人からは「ほんと腐れ縁」と言われるけど、それもよかろう)

私の両親も当初は、
学力のことを考えた時に
室蘭の高校に進学させておけばと
後悔していたそうなんですが、
毎日楽しそうに笑って過ごしている私を見て
「いいお友達もできて、人としても育ててもらって、本当に稚内に来てよかったね」
と言うようになりました
(未だに父はそう言います)

困っていそうな人を放っておけない
稚内の人たちの優しい気質に、
受験の時を含めて
私は何度助けられたことかわかりません

なので、私は
生まれは室蘭だけど、第二の故郷は稚内だよと
胸を張って公言するのです

高校受験でちょっとだけ苦労をした分、
何にも変えがたいものを得られたので、
ある意味、私の高校受験は大成功だったのかもしれませんね〜

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