見出し画像

#81 今日、何食べる? 食材から料理を決めよう

#事例

農地の風景のポストカード?と思いきや、これ、レシピブックなんです。一番左の春菊のブックには春菊のレシピ、ネギの畑のブックにはネギのレシピが載っています。こんな素敵で集めたくなるレシピブックを発行するのは、環境負荷の小さな農業を広めるための活動を行っている『坂ノ途中』という会社。

画像1

春菊のブック:6つのレシピが載っている

今回のトピックは、『坂ノ途中』の紹介と食の選択についてです。

画像3

食で環境へ貢献する手段は色々ある

有機認証ラベルは、”都市の消費者”には有機農産物にアクセスできる一番身近な手段である。あえて”都市の消費者”と書いたのは、生産地の近くに行けばラベルを貼られていない有機農産物も、直売所などで手に入るからである。生産者との距離の問題か、それ以外の理由かは定かではないが、認証ラベルを介さない消費の仕組みがあるようだ。

都市にはそのような仕組みや機会はほとんどない。しかし、都市の消費者が認証ラベルを信じる以外に、有機農産物にアクセスする手段がないかというとそうでもない。『坂ノ途中』はその手段の一つを提供してくれている会社だ。

「百年先もつづく、農業を」

がコンセプト。このワンフレーズに環境のことから農家を取り巻く現状(生産・流通・担い手etc.)まで、農業を続けていくために解決すべき様々な課題に取り組んでいることが想像できる。

社長の小野さんはインタビューで、「どんな農業をするかって、人間がどんなふうに自然環境と向き合っていくかと同義だと思ったんです。」とも言っている。

コンセプトやこの言葉は、農産物の取り扱い基準にも表れている。

取り扱い基準(公式HPより)
基準01 環境負荷の低減を目指す農家さんを優先します。
基準02 農産物の品質向上を目指す農家さんを優先します。
基準03 地域、社会、農業に貢献し、尊敬できる農家さんを優先します。
基準04 新規就農、小規模な農家さんを優先します。
基準05 コミュニケーションを大切にしてくれる農家さんを優先します。

環境に関する基準が一番最初にあって、基準01では農業をマクロとローカルの両方の目でとらえているところがおもしろい(一般的な有機農業認証からはイメージできないのではないか)。

★マクロな目で見た環境低減とは、地球規模で見た環境への影響を減らすということで、具体的には温室効果ガス(CO2やメタンガス)の削減や石油エネルギーに頼らないこと(ハウスの加温や大型機械の使用)などを意味する。

★ローカルな意味での環境低減とは、地域の生態系をかく乱するような農薬や遺伝子組み換え作物を使用しないこと、地域内で有機物を循環させることなどを意味する。

公式HPには02~05の基準についても、どういう意味を持つのか、なぜこの基準なのか詳しく書かれている。また「特別栽培についての考え方」にも、「100年先もつづく、農業を」に込められた思いが書かれているのでぜひチェックしてみてほしい。

食材に合わせて料理をつくる

#実践

先日京都に行く機会があったので、お店に寄ってみることにした。

坂ノ途中Soil

画像2

小さな八百屋、坂ノ途中Soil

注意していないと通り過ぎてしまうくらい「小さな八百屋」だったけれど、中には目を引くものばかりで見ているだけで楽しい。じっくり見ていたら店員さんが話しかけてくれた。

おすすめのお茶だとか、普段どんなふうに飲んでいるかとか。それにこの時期だけの干し芋とその製法(そのまま干すか、ゆでてから干すか)、フェアトレードのチョコの話まで。なんだか昔の商店街の八百屋さんの現代版みたいな感じで、これが実店舗のいいところだなと思った。
(干し芋、素朴な味でおいしかった)

旬の野菜セット

オンラインショップでは、野菜セットや、お米、お菓子、調味料、その他加工品を購入することができる。坂ノ途中Soilの店員さんによると、一人暮らしの女の子なら、野菜セットのSを2週に1度くらいがちょうど良いのではとのこと。レシピブックもついてくるそう。さらに、定期便には農家さんからのおまけが入っていることもあるみたい!

東京に帰ってきてさっそく旬の野菜セット(S)とお米1キロを注文してみた。どんな野菜が届くのか楽しみ!
※現在お試しセット(送料無料)はコロナの影響で注文が殺到したので一時休止中

・・・・・・

ちょっとあとがき:食の選択について思うこと

料理をするとき、前もって決めておいた献立をもとにスーパーで食材を買いそろえることは”あたりまえ”のことだろうか?私たちの世代(20代半ば)にとってはそうかもしれない。
家庭科の授業では決まったメニューに必要な食材をそろえることが常だったし、
家でも「今日の夕飯何がいい?」「カレーがいい!」みたいな会話をしていた記憶もある。

それ自体は悪い事ではない。特別な日に、誰かを喜ばせるために特別な料理を作ることも大切にしたい。一方で、普段の「食べるものを選択する」ことが環境負担を小さくするために、自分事として取り組みやすい行動であることは事実である。

だからこそ、
お店の人と話しながら何を買おうか決めること、ランダムに食材が届くことは、今までの食の選択の”あたりまえ”を変えてくれるかもしれない
と思う。

「料理に合わせて食材を選ぶ」から、「食材に合わせて料理をつくる」ようなれば、季節・地域によりそう料理になる。それは自然のエネルギーになるべく逆らわない・負担をかけないことでもあるし、生き物である自分の身体を自然から切り離さないためでもある。

最近は色々な料理動画が登場して、苦手な人でも簡単にできるレシピにすぐにアクセスできるようになった。今まで食べるだけだった人が、料理を通して食との距離がぐっと近くなったように感じたかもしれない。

それなら、動画レシピや道具の登場で、料理のハードルが低くなったその一歩先に、食材の背景を想像することはできないだろうか?
自由に外出できない今だからこそ、外の環境・自然との接点として食材をとらえなおせないだろうか?
自分の立場でできることは何だろう?

記事を書いている途中から、そんなことが頭をめぐっていた。
時間がたくさんある今だからこそ、今後も色んな情報をシェアしていきたい。

参考サイト・その他おすすめリンク

いくつかある小野さん(社長)のインタビュー記事から二つピックアップ。いちいち振り切れてて面白い。

旅は新しいことの連続であるとともに、「自分と向き合う時間を持つこと」でもある、ということはわたしも以前ヨーロッパにいたときに感じていたとこで、とても共感した。

公式HPは特に「私たちの考え」のページを見てほしい↓

地産地消、もう少し広げて日本国内で作れる農産物だけしか手に入らなかったら、食文化の多様性はなくなってしまうかもしれない。坂ノ途中では、海の向こうの遠くの農産物も扱っている↓

坂ノ途中については無印良品の記事でも少し触れています↓

食の選択についての過去の記事↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?