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アキ・カウリスマキ いっき観


今年は、新作映画をほとんど見なかった代わりにnoterさんたちのおかげで見逃していた1980、90年代のインディペンデント映画を沢山観る事ができました。
暑かったので、殆どをサブスクで視聴しました。便利な世の中になって、ありがたいです。


そして今回はアキ・カウリスマキご紹介くださったムーンサイクルさんありがとう!でもこの監督は最近読んだ「インディペンデントの栄光 ユーロスペースから世界へ」にも載っていたし、「ル・アーブルの靴みがき」という映画は昔見たことがあるけど地味な映画で殆ど記憶がない。という事で全然知らないわけじゃなかったけど、アマプラで視聴しました 。

視聴した作品は下記の通り11作ですが、全ての感想を書くと長くなりますので個人的に印象に残った5作に絞って書かせていただきます(○印、ネタバレあり)

①:パラダイスの夕暮れ(労働者三部作)1986
2:真夜中の虹     (労働者三部作) 1988
3:レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ  1989
4:マッチ工場の少女 (労働者三部作)1990
5:コントラクト・キラー       1990
⑥:愛しのタチアナ                              1994
⑦:浮き雲       (敗者三部作)1996
8:過去のない男        (敗者三部作)  2002
⑨ : 街のあかり    (敗者三部作) 2006
10:ル・アーブルの靴みがき       2011
⑪:希望のかなた                                 2017


① パラダイスの夕暮れ  1986

カウリスマキの作品ってホント地味。
のっけから、ゴミ収集車の作業員が登場してプロレタリア映画の匂いが漂ってくるけど、さすが北欧の労働者は恵まれた生活をしていて作業を終えると自分の車に乗って、うさぎ小屋なんかではない広いアパートに帰って行く。途中で英会話教室にも行くし、スーパーで買い物もする。
そのスーパーに気になる女性が働いているのだが、無愛想な男は デートに誘っても気が利かなくて振られてしまう。でも女性の方も色々あって結局は男の本質を理解して結ばれるというお話。フィンランドの年配の男性にはこのタイプが多いらしい。
実際に住んでいらっしゃる森野しゑにさんの記事を読むと、ああそうか!と納得する。この男の役を演じるのがMatti pellonpää(マッティ・ペロンパ)というただのオッサン(笑)俳優で少ない台詞と無表情で演技する。二枚目とも思えない。カウリスマキ作品の常連で、視聴した映画のほとんどに脇役で登場する。
女性役のKati Outinen(カティ・オウティネン)は、もっと凄くて殆ど全ての作品に主役か準主役で登場するが、美人でもなんでもない普通のオバさん(笑)
この2人が共演しているというだけで価値がある初期の作品である。

⑥  愛しのタチアナ 1994

マッティ・ペロンパとカティ・オーティネンにもう一組の男女が加わったロードムービー。男性2人が女性2人を港まで車で送って行くというなんの変哲もない物語でネタバレしてもいっこうに構わないアクシデントの無さで淡々と進んで行く。男性2人は、フィンランド男丸出しの退屈さで女性とホテルに泊まっても何事も起きないが結局、マッティ・ペロンパとカティ・オーティネンは結ばれる。音楽には疎くてよく分からないが、音は随所で効果的に使われているが演歌みたいで古くさい。驚くことは女性もプカプカ煙草を吸うこと。その上、主演男優はコーヒー中毒でコーヒーが手放せない。母親を監禁して出掛けて一泊して戻ってきて解放して終わるなんてあり得ないコメディ!

⑦ 浮き雲  1996

敗者三部作の一作目と言うことだが  この敗者というネーミングが笑える。カティ・オウティネンとカリ・ヴァーナネンの夫婦がレストランの給仕長と路面電車の運転手の仕事を両方とも首になり、新しい仕事を探しまくるお話で最後は夫婦で新しくレストランを開業してめでたしめでたしで終わるのだが、そのレストランに最初客が入らなくて気をもむところとか、最後は満席になるところが2006年の日本映画「かもめ食堂」にそっくりでビックリ!多分かもめ食堂の方が影響を受けたとおもわれる。フィンランドが舞台だし、「過去のない男」で主演したマルック・ぺルトラが脇役で出ている。この方は「浮き雲」にもアル中のコックの役で出ているのを確認したが痩せてしまって、とても同じ人とは思えない。2007年に51歳でお亡くなりになったそうな。ちなみに、マッティ・ペロンパもこの映画が完成する5ヶ月前に亡くなっていてスタッフロールの導入部に献辞が捧げられている。享年44歳。
「浮き雲」というタイトルについても日本映画へのオマージュと思われる節があるけど、これはもうちょっと調べてからお伝えします。

⑨ 街のあかり  2006

「浮き雲」「過去のない男」に続く敗者三部作の最後の作品で敗者と言えばこれが一番当てはまって最後まで悲しくてやりきれない。珍しくイケメンの警備員が、好きな女性に騙されて散々な目に遭うのだが、どうしてここまでするのか分からないくらいやられっぱなしで終わってしまう。
前二作はハッピーエンドで敗者とは言えないのにどうしてこの作品だけ///

⑪  希望のかなた   2017

「ル・アーブルの靴みがき」に続いて難民問題を扱った作品で港町三部作の二作目に当たるらしいが、三作目を撮る前に監督が突然引退宣言をしたらしい。
結局、また復活するのだが( ^ω^)・・・
シリア難民の男性が親切なレストランのオーナーに助けられて、生き別れになっていた妹を救出する話。ここで日本びいきの監督が赤字の店をスシレストランに改業させるのだが、うまくいかずに元のフィンランド料理に戻る。
最後が理不尽過ぎるところは「街のあかり」と同じ。極右の暴漢に襲われハリウッド映画なら絶対にやらないであろう終わり方をする。

以上、地味だけど味わい深く心に残る作品の数々をご紹介させていただきました。カウリスマキ作品はどれも1時間30分くらいで見やすくできています。

           ここでニュース!    
監督の最新作「枯れ葉」が日本で12月15日に封切られます。場所は長年にわたりカウリスマキ作品を配給してきた渋谷ユーロスペースその他で全国展開の予定。興味のある方は是非お出掛けください。
私も観れたら又感想をアップさせていただきたいと思います。
ここまで長らくお付き合いいただきありがとうございました。   


リンクを貼らせていただきましたムーンサイクルさんと森田しゑにさん、日頃のご交流に甘えて今回はご許可を取らずに掲載させていただきました。いつもありがとうございます。
久しぶりに帰国中のしゑにさん。トラブルに見舞われて大変な目に     遭われましたが、今頃はすっかりお元気になられて日本の秋を満喫なさ
っていらっしゃることと思います。