コップの中の嵐
10年前にある人が「もう死んでしまおうと思う気持ちはよくわかる。でも、これまで、どんな苦しい状況になっても死ななかったのは、なぜだろう?」と話していた。すこし考えて、「本を読んでいたからかな…」
その〈本〉というのは、いま役に立つことが書いてあるというようなものではないのだ。そのとき、たまたま手元にあった〈本〉であり、ただ、どこかにある風景をことばで書いてあるだけかもしれない、とにかくそこに書いてあるものを読むのである。ぼくにはその気持ちがよくわかる。そうやってぼくは今日も本を手にしている。