紙くずからの光
「どうしてもうまくできないんですよねぇ」
ある人からの手紙に、そんなことが書かれていた。手紙だから、ぼくの相槌を待つ前に次の文章がつづく。
「でも、いろいろ見てみたら、うまくつくられたものばかりじゃないんですね。むしろわざと、崩すようにしてつくられてるようなものも多い。そうか。もっと自由に、のびのびとやってみたらいいのかなぁ」
ぼくが何も言わなくても、書きながら本人が何かに気づいている。そんな様子を手紙で受け取るのは気分の良いもので、ぼくも自分の仕事をその人のことばで照らしてみる。
これは原稿に取り組んでいる人の話ではないが、たとえば原稿でも「うまくかけないな」と思うことはあるもので──というかぼくの場合はほぼ毎日なのだが、まぁ、書いたばかりの原稿を見返して「素晴らしい!」となってる人はたいへんオメデタイ人だという気がするので、「うまくかけないな」くらいがちょうどいいのかもしれない。
ぼくの師匠(小川国夫さん)は「書いたものはどんなものでもちり紙にするな」と言っていた。せっかくなので、『アフリカ』2008年7月号に守安涼くんが書いている追悼文「どの窓からも海と島々が見えます」から引用すると、こういう話になる。
「それから、書いたあとの自己嫌悪に耐えること。芭蕉は『文䑓(台)引下せば即ち反故なり』といったけれど、たとえ紙くずに見えたとしても、とっておかなければいけない。それがすなわち推敲することにつながる」
(つづく)
「道草の家・ことのは山房」のトップ・ページに置いてある"日めくりカレンダー"は、1日めくって、10月16日。今日は、「誕生日プレゼント」の話。
「オトナのための文章教室 in 横浜 & 三鷹」の10月、三鷹は今週、金曜(18日)の夜、横浜では31日(木)の夜スタート。両方とも参加者大募集中です。
10/27(日)には、「横浜らいず」で行われる「丘の上マルシェ」に、道草の家(アフリカキカクとひなた工房&モア)で出店します。詳細は近々。ほんとうに近々!(というか、もうすぐです)
日常を旅する謎の雑誌『アフリカ』最新号は、継続して販売中ですが、在庫が少なくなってきました。
※"日めくりカレンダー"は、毎日だいたい朝(日本時間の)に更新しています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?