歌い出していることば
帰省話のつづき。
久しぶりに会ったこどもたちは、とにかくずーっと遊んでいた。
何かイタズラのようなことをして、ぼくの妹(彼らにとっては伯母ちゃん)から「それはやめて」と言われた時に、甥っ子が「やめてっていうのは、やめないでっていうことなんだよ!」と言っているのが面白かった。
同じような言い回しを彼は何度かしていた。
「AはAではない」
というのは、ムチャクチャなようでいて、じつはとても単純だ。Aはひっくり返したらAではないわけだ。幼いこどもでも理解しやすい。それがどういう意味かを考えるからムチャクチャと感じられるだけだ。
「晴れているということは、晴れていないということだ」
晴れていないというのは、しかしこの場合、雨が降っていることを指してはいない。晴れてない。曇が出ているのかもしれない。しかし晴れ間もある。晴れているということは、晴れていない部分があるということにもなる。こんな屁理屈みたいなことをこどもは考えてない。ただ、ひっくり返してみているだけで。
これは、単なることば遊びだろうか。
(ことばに、「単なる遊び」なんてあるだろうか)
昔、若い頃、小川国夫さんが「下窪くん(の書くもの)は裏をとるのが上手い。表といえば裏という。裏といえば表という。音楽のリズムだね」と話していたことがあった。
どんなことでも、表があれば裏がある、ということは意識していたつもりだったが、それを音楽とつなげたことはなかった。小川さんはきっとぼくの音楽マニアぶりを知っていて、そういう連想をしたのだ。
こどもたちの話しているのを聞きながら、彼らはまだ文字をたくさんは書けない、しかし(いや、だからこそ)ことばはもうとっくに"歌っている"んだ、なんてことを、ふと、少しだけ考えた。
(つづく)
「道草の家・ことのは山房」のトップ・ページに置いてある"日めくりカレンダー"、1日めくって、3月28日。今日は、"普段見慣れた風景"の話。
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