グラデーションの中に
後から振り返った時に、狙っていたことの大半が実現している場合と、殆ど達成できない場合があり、より嬉しいのは後者だということがある。どういうことかという、当初は思いもしなかったことが起こり、その分、思い通りにはゆかなかったが、結果的によかった、と感じられている。そういった経験を重ねる中で、「もう達成目標など立てるのを止めよう。ひたすらなりゆきの風に吹かれてみよう」と考えたことがあった(「なりゆきの作法」というエッセイにも書いた、『音を聴くひと』に収録)。最近になってわかったのは、そういうことを考えられたり、書いたりできたのは、ガチガチに目標を設定してやってみようとした経緯があったからだということで、いつだって、「こうしたら上手くゆく」なんて決まった方法はないということだ。とはいえ、方法はある。あることをやるにしても無数のやり方があり、そのグラデーションの中に身を置いて試行錯誤を続けるのは、たのしい。