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初めての滋賀レイクスホームゲームは2連敗だったけど、
心の底から「来てよかった」と感じています。
帰りながら次の滋賀計画を立てるくらいには楽しかったです。12月8日、帰りの新幹線でこれを書き始めて終わらないまま2週間以上経ったのはさておき。初めて滋賀に行った記録を残しておきます。
そもそもなぜ滋賀なのか
きっかけは、今年加入したPGの游艾喆選手でした。台湾出身の彼を初めて見たのは、大学バスケの国際大会・WUBS2023。鮮やかすぎるパスに目を奪われて、友人と「A代表級じゃん」「また見たい」「台湾に行くしかない」「いつか日本でプレーしてくれないかな」と言っていたら…… いきなり日本でプロデビューした。
游艾喆くん滋賀レイクス!アツすぎるアツすぎるアツすぎる……!滋賀まで応援にいきたくなってきた 人生初滋賀しようかな
— ハルミナミ (@harusea1120) June 24, 2024
台湾の大学No.1ガードですから、国内チームからも熱烈なオファーがあったはずです。大学を出たばかりで、言葉も文化も違う場所で、家族やパートナーと離れてプロデビューする。その勇気を前にしたら、同じ国内にある滋賀を「遠い」なんて言っていられません。東京在住の人間にとって、関東圏内のアウェイゲーム会場などもはや庭に等しい。
ということで、関東で観られる試合には出来るだけ通っています。苦戦するチームを応援するうちに、いつしかレイクスは「游くんがいるチーム」から「勝利を喜びたいチーム」に変わっていました。いま思い起こすと、勝つか…!?と手に汗握った群馬戦が最後のひと押しだった気がします。仕事の忙しさで財布の紐も引きちぎれて、気付いたら滋賀の宿と新幹線を予約していました。
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同じ「負け」でも、全く違う2日間
東京から京都。京都から瀬田。瀬田からダイハツアリーナ。「プレでは勝ったし良い勝負ができたら良いな」「速い展開の殴り合いが見たい」「とはいえハセノボさん上手すぎるしフランクスのスリーが着火したら恐いよな」「滋賀ってエスカレーター左立ちなんだ!」「近江ちゃんぽんおいしそう」などとつらつら考えているうちに到着し、スキップ気味に会場へ……
7日のGAME1は、心が折れそうな敗北
驚きました。
結果的に66-93となった点差以上に、みるみる覇気がなくなっていく様に驚きました。前半は、しっかりフリーを作ってスリーを決めたり、スティールからの速攻を成功させたり、初めてのダイアリに高揚しているのもあって楽しく観ていたんです。
でも後半。点差が開くにつれて、ミスを恐れて萎縮するような弱々しい空気になって。客席からのあちこちから「あ~…」とため息が聞こえて、帰っていく人も出はじめて。きっと普段とは違うであろう雰囲気に心細くなっていく時間でした。それでも応援をやめないたくさんの人たちの存在を支えに、最後まで攻める大庭くんのガッツにすがるような気持ちで応援し続けたけれど……試合後のインタビュー、いつも以上に言葉が詰まって出てこなくなる大庭くんの顔を見られませんでした。
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8日のGAME2は、心を強く持てた敗北
また驚きました。
結果だけ見れば81-93でしっかり連敗です。ただ、前日とまったく違う勢いのあるゲーム。3Q入りで茨城の立て直しに対応しきれないのは伸びしろ~!と震えたけれど、一方的なやられっぱなしで終わらなかった。最初から最後まで激しい常田くんのディフェンス、果敢にアタックしてエンドワンに持ち込む游くん、4Qでぶっ刺さるスリー泰希くんの連続スリー。前日は感じられなかったエナジーがあって、心躍る試合でした。
実は、朝起きてSNSを見たとき、アリーナに行くのを一瞬ためらったんです。怒りの声がたくさん流れていって、本物のブースターとは?論争なんかも起きていて、「新参の私がベンチ裏ブロックにいて大丈夫か?」と。でも、行ってみれば本当に力強くあたたかい雰囲気で、ベンチの空気まで感じられると試合はさらに面白くて、ためらいに流されなくて良かったなあと噛みしめています。
1点差も100点差も負けは負け。いまこの状況なら、これから当たるチームとも厳しい戦いが続くでしょう。だからといって、この2日間のように踏ん張って起き上がってくれるなら応援がイヤになったりはしません。「この選手のこんな個性が活きたら面白い試合になりそう」なんて楽しみも増えてきたし、ここまで負け続ける経験をしたことがないだろう游くんも、みんなで乗り越えたらもうひと回りたくましくなるだろうから。
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帰りのバスを待ちながら、ふと、朱戸アオさんの医療漫画『インハンド』を思い出しました。己の無力を嘆く医師に対して、寄生虫学者がこんな台詞を言うシーンがあります。
「確かに僕らは無力だ。今、打つ手なく目の前で死んでいく患者にはな。センメルヴェイスは150年以上前に医者の手洗いが産褥熱を予防する事を発見したが、学会で認められず精神病院に入れられて死んだ。でも今、僕らは手を洗う。ジェンナーが天然痘のワクチンを発明したのは1796年だが、世界から天然痘を根絶するにはそれから181年かかった。我々が今良い治療を受けて健康に生きているのは、過去の患者やその死体を過去の研究者が研究したからだろ。僕らもそうすればいい。もっと遠くを見ろ、100年後か、200年後か。誰も無力じゃないぞ。僕も、君も、君の恋人も。僕らの死体や脳ミソの上に、未来の奴らの健康があるんだからな」
目の前の仕事に押しつぶされそうなときは、いつもこの台詞を抱きしめて遠くを見るようにしてきました。たとえ連敗のトンネルの終わりが見えないときでも、同じようなマインドでいよう。そうすれば、どこまでも応援し続けられるんじゃないかな。だれも無力じゃないぞ。いやさすがに100年経つ前に勝ってほしいが……と思いながら、お腹いっぱい近江ちゃんぽんを食べた夜でした。
※12/22 渋谷に勝って連敗ストップ。やはり100年は必要なかった。
滋賀の応援は「6人目の手」だと思う
試合の他に、ダイハツアリーナで楽しみにしていた「大音量の声援」。体験して腑に落ちたんですけど、凄いのは声の「大きさ」そのものだけではないんですね。シンプルな音量や声量だけならもっと大きい会場を知っています。
本当に凄まじいのは、応援に宿った強さなんじゃないでしょうか。指向性の高い応援というか。大きい声も小さい声も、思わず息を飲み手を叩くアクションも、全部集まって固体のようになってる。その塊が、懸命に走る選手の背中を押したり、悔しがる選手の背中をやさしくさすったり、相手のフリースローを叩き落したりする。
私には、ブースターの声と熱気と願いが「6人目の手」になっているように見えました。もちろん、全てのチームのブースターが本気で応援していることは知っているし、それぞれに素晴らしいブースター魂を感じます。ただ、応援が固体化して感じられたのは初めてです。
ロスター紹介の最後に「ナンバー55!レイクスブースター!」と呼んでくれる演出があるのも頷けます。まさに共闘なんですね。
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本物の「勝利の女神」が舞い降りた
もう1つ、レイクスチアリーダーズを生で見ることも楽しみにしていました!バスライ越しですら美しいオープニングパフォーマンスのアクロバットとダンスに気を取られがちだったけれど、それだけじゃなかった。
試合中、どんなに冷え切ってしまう場面でも、全身にパワーをみなぎらせて「ゴーゴーレイクス!」を先導する姿があまりにも「勝利の女神」すぎるんですよ。勝ててないけど。特に1日目の後半のような局面では、聞こえてくるチアさんの声に救われました。折れない芯の強さこそレイクスチアなのかも……かっこよすぎるよぉ……という心持ちでした(心の声が漏れていなかったか心配)。2日間ともに試合展開が苦しかったからか、余計にレイクスチアリーダーズの強さが響いたなあ。HARUNAさんかわいい。
悔しさよりもやさしさに泣かされる
ひとりで慣れないアリーナにいた2日間、レイクスブースターのみなさんのやさしさも沁みました。
1日目。憤って帰っていた方々の席に散乱するゴミを拾っていると、近くで最後まで応援していた方が一緒に拾ってくれて、「悲しいですねえ」「グッズは落とし物のところに届けておきますよ」と。近江ことばなんでしょうか、西の言葉のやわらかいトーンってあったかいですね。試合結果でガチガチに固まっていた心がほどけてホッとしました。こういう人に私もなりたい。
2日目。両隣の方が、レイクスやダイアリのことをやさしく教えてくれて安心しました。私が東京から来た游くんファンだと知って、游くんが良いプレーをすると「良かったねえ」と言ってくれたり、游くんのランダムグッズを譲ってくれたり、「新幹線で食べて」とお菓子をたくさん持たせてくれたり。あまりにもやさしく甘やかしていただいて緊張が解けたからか、最後は子どもみたいにグズグズ泣いてしまって恥ずかしかった……。こういう人に私もなりたい。
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あらゆる感情と一緒に過ごした2日間
「滋賀まで観戦しに行って2連敗」という事実だけ切り取ったら、冴えないひとり旅だったと思えるかもしれません。
でも、2日間にあらゆる感情をぎゅっと詰め込んだような時間を過ごし、強がりじゃなく「楽しかった!」と言えます。
初めて行くアリーナに足を踏みを入れるワクワク、どこを見ても味方がたくさんいる心強さ、游くんのサインボールが前列に落ちる微妙なしょんぼり感、目の前でいきなりスリーが決まる興奮、迫力あるプレーへの驚き、惜しいプレーへの悔しさ、ガラガラと崩れていくチームへの焦り、上手くハマらないセットへの苛立ち、苦しそうにする人を見守る苦しさ、憤る人への怯え、怯える自分への怒り、怯えを振り切る元気、やさしさへの感謝、崩れたチームが再び走り出すことへの期待、期待を持てる嬉しさ、後ろ髪引かれながらも帰らなくてはならない寂しさ。
今まではずっと千葉が心の故郷だったけれど、心の故郷がもう1つ増えそうです。滋賀レイクスとの縁をつくってくれた游くんという素晴らしい選手に、応援せずにいられないバスケットボールを見せてくれる滋賀レイクスというクラブのみなさんに感謝します。さて、次はいつ滋賀に行こうかな。
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