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『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』を斬る!?

はじめに
こんなに時間が経っちゃったけど、noteに投稿を始める理由はただひとつ。
——春馬くんのこれまでの旅路とこれからの長い旅を応援していこう。
まだ会っていない人が春馬くんと出会えるよう、世の中が春馬くんを忘れてしまわないよう、そのきっかけとなれるよう祈りを込めて
——

わたしのようにほぼ100%知らなかった人間をも夢中にさせる春馬くんの魅力を何としても後の世に残したい! なんておこがましいけど、でもネットの世界ならそれができるかもしれない。『アキハバラ@DEEP』のページくんだって「ユイさんに、ネットの海で永遠に生きてもらおうよ」って言ってるじゃないか。
それには作品について語っていくのが一番。
とにかく観てほしい、感じてほしい——まずはそこから始めよう。
多くの人に春馬くん作品が届きますように。

/おもいっきりネタバレします。ご注意ください/
/基本的に敬称略。“春馬くん”だけ例外/

「春馬くんとの出会い」については…👇


初めての『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』

最初はどの作品にしようかと迷ったけど、『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』から始めようと思う。
主演作品じゃないし、観なくてもいいやと思ってるかもしれないけど、この作品はある意味「特別」だから。もっともっと多くの人に観てもらいたいから。
 
初めて観たのは約2年前。残念なことに今年3月でサービスが終わってしまったGYAOでの無料配信だった。
それまでは短い動画と断片的な情報しか知らなくて、春馬くんは少ししか出てないようだし、どうしても観たいとは思ってなかった。さらに「バンドシーンはカッコイイけど、映画自体は…」というような評をいくつか読んでいたので、まったく期待していなかった。
だが観てみたら、あらビックリ。なんだ、おもしろいじゃないか。他人の感想というものは当てにならないもんだ⁈
この映画好きだわー。それなのにあまり人気がないらしい。ならばと「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ広め隊」を名乗って配信があると情報を知らせてきた。だがTwitterなどはやらないので限界がある。効果があったとは思えないけど、それでも気持ちだけはがんばってた。

てっきり原作はコミックで、チェーンソーを持った危ない男と若者が暴れるくらいの話だと思ってた。何か深いモノがあるとはとても思えなかった。でも実際はそうじゃなかった。
チェーンソーの音はやたらと怖いけど、終わってみれば残虐な場面はまったくなくて、そして、ものすごく考えさせられた。
表向き軽いノリで生きてる若者の心の底にあるモヤモヤ感が、ヒリヒリとこちらにも伝わってきて痛いくらいだ。若者、特に男子の心の葛藤がとてもよく表われている。でも能登が春馬くんそのもので泣きました。チェーンソー男で泣くなんて思わなかったよ…。

たったの8分‼
たしかに春馬くんの出てくるシーンはとっても少ない。
ある日、あらすじを書きながら能登の出演時間を計ってみた。
動いてる姿が映っているのはバンドシーンを含め、大目にカウントしてもたった7分58秒! 声だけが6秒。あとは部室の壁に貼ってある写真が数回映るだけ。
全編109分の映画の中に約8分しか能登は登場していないのだ。
「8分よ、8分! たったの8分! どうしてくれんのよ!」って絵理ちゃんなら回し蹴りの一本でもお見舞いしてるところだ。
もっと出てたらなあ、という気がしないでもないが、それよりも「8分しか出てないのに、この存在感はいったいなによ?」という思いのほうが強い。主人公陽介を差し置いて(失礼…)、これほど強い印象を残す能登って?

おバカなフリをした青春映画⁉
えっ、時代劇だったの? と思わずつぶやいちゃうオープニングからすでに引き込まれる。
何かが起こりそうに不安を煽る音楽、殺気みなぎる鋭い目つきの男子。大立ち回りが始まるのかと思えば、手裏剣ならぬナイフでのお決まりの水芸。時代劇ファン拍手喝采⁈ そして、月がぐるぐると回転して肉のスライサーに繋がるところなんざあ、しびれますなあ。バリバリ昭和感なのが楽しい。
 
友だちが死んで焦ってた、オレも何かしなければ——と高級黒毛和牛霜降り肉 8,400円也 を万引きする陽介。
彼は焦っているのだ。何をやっても中途半端な渡辺をバカにしているが、実のところ、何かに夢中になれる渡辺が羨ましい。そんな情熱を傾けられるものが自分には何もない。バイクでまっすぐに突き進んで死んだ能登をカッコいいと憧れているが、根性なしの陽介にはそういう熱さはない。だから焦っていた。
そんなとき巡りあったのがチェーンソー男と戦う絵理ちゃんだ。絵理ちゃんを手伝うことに意義を見い出そうとする。でもできるのは、絵理ちゃんを自転車の後ろに乗せて家と戦う場所を往復すること、戦いが終わった絵理ちゃんに熱いコーヒーを注いであげること、あとはおんぶしてあげることくらいだ。絵理ちゃんの手助けもできず腰を抜かすばかりなのに、それでもやりがいを感じてる。
ヘラヘラと楽しくおかしく若い時間を過ごしたいけど、心の隅には焦る気持ちが潜んでいる。何をしたらいいのか、どうやって生きていったらいいのかどうやって死んだら、どうしたら…
渡辺のように何かに熱くなることもできず、能登のように何かに怒りをぶつけることもできない。どうすればいい? どうすれば…。

『台風クラブ』
人間だれしもおとなになる前は少なからず悩むものだ。おとなになっても悩むんだから。
そんな時、映画を観て「そうかっ!」ってわかるほど人間簡単じゃない。だれかや何かに教えてもらったって自分が受け入れられなきゃ意味ないし。
自分で求めていくしか方法はない。自分でもがいてもがいて、やっとどこかに転がっていくものなんじゃないか。おバカな陽介だって「そんなこと、わかってんだよ!」。だからもがく。
じゃあ、こういう映画がある意味ってなんだ?
ふっと思い出した『台風クラブ』。相米慎二監督の1985年公開の映画。
台風が近づく土曜日。学校に閉じ込められ下着姿になって踊りまくる生徒たち。豪雨で池みたいになった校庭で大声あげて騒ぐ。発散させたい何か、大雨に流したい何かで若い体の中はいっぱいだ。
「台風来ないかな…」
うん、昔、台風来るとちょっとドキドキワクワクした。押し入れの中で懐中電灯つけたりして遊んだ。近頃の台風は狂暴すぎて、そんな甘い気分ではいられない。だからますますイライラが募る。

陽介は大雨の中で踊ったり騒いだりしない。「女のために命をかけるってどうよ」って言ってる割には、転校することに抵抗しない。絵理ちゃんと離ればなれになってしまうというのに、親の言うことをただ受け入れちゃう。今どきの子ってそうなの? なんで?
けど、最後に陽介も決意する。自分の脳みそで、考える。サヨナラ言って転校してる場合じゃないぞって。

能登は春馬くんそのものだから 
陽介の心の中には能登が棲みついている。
冒頭から陽介は能登のことをつぶやく。ボソボソした声で。
——能登っていう名前の友だちがバイクで死んだ。オレが焦っていたのはそのせいかもしれない。ちくしょう、先を越された。とにかくオレも何かしなければと思っていた。なんとなく。なんでもよかった——
その後も陽介のモノローグ、渡辺や絵理ちゃんとの会話に能登のことはたびたび出てくる。小説では後半、陽介はずっと能登に話しかけてる。答えは当然ないけどって言いながら…。
自分のずっと前を行く能登を、まっすぐで熱い能登をカッコいいと思う。だからもがいてみるが、自分がそうなれないことは十分わかってる。
チェーンソー男が消え、絵理ちゃんとダラダラ楽しく生きてやる、と言ってるのに、それでもまだちくしょうと思う陽介。羨ましいだろうと言いながら悔しそうな陽介。流れる涙はなんの涙?

8分しか出てこないけど、能登はカッコいい。
腰パンでやる気なく校庭を走る陽介と渡辺を尻目に、黙々とマジに10周する能登。
好きな女を巡る決闘のはずが、あいまいに仲直りをするヤツらに「それでいいのか!」と飛び蹴りし、一人かかっていく能登。
バイクの陽介に「オマエはオレには追いつけない。オマエはあの子とダラダラと、うすらぼんやりとした幸せを楽しめよ」と言って走り去る能登。
何ごとにもさめてる若者たちの中で、能登は前時代的と言えるのかもしれない。熱くてまっすぐで恐れを知らない。
そんな能登なのに、ちょっと浮かれてる陽介に「気をつけろよ」なんて言葉をかけたり(登場の仕方は怖いけど…)、クラス中がはやし立てる教室で担任の先生にチューされて崩れ落ちたり、俺さまーズTシャツを着てはしゃいだり、とお茶目な面もある。
ひと際目立つ容姿、色白でスリムな体、何事にもまじめで一生懸命、女性に心底やさしく、女性を軽く扱うヤツが許せない、高く飛び蹴りできる身体能力、大きなことにまっすぐ飛びこんでいく勇気、そして……
なんだ、なんだ、これってまるで春馬くんのことじゃないか。
「能登。そこにいんだろ。だったらオレを見てろよ! オレはこれから絵理ちゃんとダラダラ楽しく生きてやるよ。羨ましいだろ。生きてるオレが羨ましいだろ。うっうっ、ちくしょう…」
最後に陽介が能登にかける言葉が、春馬くん本人に向かって言ってるようで、何度観てもそこで胸が詰まる。

鮮烈に強くまっすぐ生きた能登と春馬くん。物語を見てるのか、春馬くんを見てるのかわからなくなる。
能登の中に春馬くんが見えたわけじゃない。ここでも春馬くんは完璧に能登だ。能登以外の何者でもない。だけど能登は春馬くんだ。死が提示されているからではなく、能登の生き様が春馬くんそのものだから能登は春馬くんなんだ。うまく言えないけど。

俺さまーズ『根性なし』‼ 
この映画のハイライト『根性なし』を歌う能登のカッコよさよ。曲もいい! 渡辺が作ったのがヘボヘボじゃなくてほんと、よかった。
能登がバイク事故の前に書いた歌詞に渡辺が曲をつけたという設定で、転校する直前の陽介に聴かせるのだから3人の演奏シーンは幻影である。が、音楽は文字では表わし難いモノだから、これは映像作品の特典お宝。
金髪頭を揺らしながらベースをかき鳴らし歌う能登。楽しそうに動き回るギターの陽介。「3人でなんかやりたかったんだよ」(小説『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』より)と言ったキーボード渡辺の、これは叶わなかった夢、希望。

——では、ここでひとつ質問です。「歌っているのはだれ?」
えっ? 当然、春馬くんでしょ。そうかな?
実はアップされている動画の中には浅利陽介歌唱のものが存在するんです!!そこに「歌:三浦春馬」と書かれていても、バンドシーンに合わせて歌っていたとしても…。
まだ映画本編を観ていない頃にそれを知ってビックリ。「春馬くんが歌ってる貴重なシーン」と信じていたのに…。今ならすぐわかるけど、この頃は聞き比べてもなかなか違いがわからなかった。春馬くん歌唱の動画は、たいてい音質がひどく悪かったせいかもしれない。
コメントなどを読むと、まだ知らない人がいるようだし、未来の春馬くんファンが悩まないよう書き残しておこうと思う。
映画の中で歌っているのは春馬くんだ。じゃあ浅利陽介歌唱の『根性なし』とはいったいなんぞや。
「Watanabe Special Edit」と銘打たれた『根性なし』が、映画公開に先立って発売された(らしい)オフィシャル・コンピレーション・アルバム、その名も『ネガチェンコンピ』に収録されていて、それは、アレンジし直された曲を浅利陽介が歌っているんだって。
要するに、春馬くんは映画の中で歌っているだけで、それ以外は『ネガチェンコンピ』に収録されている浅利歌唱の渡辺バージョンってことだね。DVD特典映像のメイキング後半で流れるのも、映画のバンドシーンと組み合わせた渡辺バージョンだ。
そして、映画の中の歌もはじめのほうは春馬くんじゃなくて渡辺の声だと思うんだ。

♬ 本当は怖いんだ それでも逃げなかったぜ
♬ 真正面から行けよ まだ方法はあるはず
曲のはじめからここまでは渡辺の声。
ここでバンドシーンの映像に変わり、
♬ どこまで行けるんだろうって この身体が知りたくて
というところからが能登の声で、
♬ いつか君にも打ち明けたかった  
ここまでが能登の声。そして演奏終わり。ピューピューッ‼

春馬くんの歌はなぜCDにならなかったのか。
映画の中のバンドシーンでは、能登が書いた詩を能登自身に歌わせる——それが最初からの設計だったんだと思う。だけど後に言ってるように、春馬くんは歌を世に出す考えがまったくなかった。だから、サントラ盤に春馬くんの歌を入れるわけにはいかない。そこには別に収録した浅利陽介歌唱を入れることにした。メイキングでも渡辺バージョンを使っているということは、春馬くん歌唱は映画内限定だったのだろう。
メイキングのレコーディング風景では、春馬くんは浅利陽介歌唱の上に部分的に歌を重ねているように聞こえる。だから全曲は歌ってないのだと思う。このあたりまったく勝手な推測なので、あしからず。いつか関係者が語ってくれるとうれしいのだが。
落ち着いた声でとても上手な渡辺バージョンだが、春馬くんの、まだちょっと青い歌声が心に残る。映画からでしか得られない青春の甘酸っぱい味。

『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』
おもしろくて怖くて切なくて楽しくて悲しくて、心にしみる映画だった。
「生きることを正面から訴えた」のではなく、「死は、生きることの対極ではない」とわたしは受け取った。人生後半になっても新たなメッセージを感じ取ることができるっていうのが、こういう映画が存在する理由なのかもしれない。なんとなく…

今はいい時代だ。DVDもある、動画配信サービスもある、無料配信までしてくれる。昔だったらもう会うことができなかった映画に、未来になっても出会うことができる。だから、あとは何と出会うかだけだ。

そりゃ気持ちはわからないでもないけどさ、春馬くんシーンしか観ないなんてもったいないよお。観ないのはもっともったいないよお。
作品自体を好きになってくれるといいなあ。最初から最後まで、能登は陽介とともに存在しているんだから。
「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ広め隊」からのお願いです。

作品情報
ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ / Negative Happy Chainsaw Edge
2007年製作/109分/日本
第4回日本映画エンジェル大賞佳作入賞/第20回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」上映作品
劇場公開日:2008年1月19日(土) 
配給:日活
原作:滝本竜彦 小説『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』(2001年11月28日 角川書店発行)
脚本:小林弘利
監督:北村拓司

この頃の春馬くん🐴】
2006年12月20日:連続ドラマ『14才の母』最終回放送
12月28日:スーパーハンサムライブの前身「年末LIVE バラエティーショー2006 ~真冬のどんちゃん騒ぎ~」初参加
2007年1~2月:仕事に関する情報ナシ
3月下旬:『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』撮影
4~5月:『恋空』撮影
6~8月:『奈緒子』撮影
11月3日:『恋空』劇場公開

@マンゴの“ちょいと深掘り”-三浦春馬出演作品を観る①
『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』を斬る!?
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