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第24夜◇花見んと群れつつ人のあるのみぞ~西行法師

花見んと 群れつつ人の あるのみぞ
あたら桜の 咎にはありける


(意訳:花を見ようと人が集まってしまうのが、
桜の罪なところだ。)

西行法師 西行桜

西行が桜を愛でながら口にした、小粋な呟き。
お能には、この続きがあります。

寝入った西行の夢に桜の精が登場し、
物言わぬ桜に罪はないと主張する物語。

そんなお能の演目 西行桜の桜の精を、今月、
人間国宝能楽師、梅若実さんが演じられました。

高齢により随分とお身体が弱られたご様子で、終始両手に持った杖でやっと身体を支えながらの、舞い、謡い。

西行の夢が覚め、桜の精も消えるという最終場面。

「夢は覚めにけり..」

そう、最後のセリフを一言残して、閉幕。

お決まりの謡いですが、この時ばかりは、梅若実さんご本人から発せられた言葉に聞こえてなりませんでした。

現世、また生への別れ、お能という芸に尽くした夢の終わり..

万事が一夜の夢、この世に生まれ、死んでいくこともまた、夢のようなものなのかと、わたしは呆然としながら、うつつに戻りゆく能楽堂に取り残されたのでした。

今こうして振り替えると、演者の方と役が完全に一体となった、お能最高の芸を見せられたのでしょう。

どうか末永くご無事で、また舞台の上でお姿を見られることを、祈るばかりです。

(西行桜・国立能楽堂・2021年5月21日)