春枕

銀座の茶房…https://www.harumakura.com〜ひとめ見し君もやくる…

春枕

銀座の茶房…https://www.harumakura.com〜ひとめ見し君もやくると桜花〜喪失のかなしみに…大切な方のご命日に… 完全予約制

マガジン

  • 春枕

  • 春枕のひととき

最近の記事

  • 固定された記事

「春枕」とは〜永遠に咲き続ける心の花と絆〜

「春枕」は、銀座の一角にひっそりと佇む、ちいさな茶房です。訪れてくださった方にとって、今は亡き大切な人を想うための場所です。 宗教によらず、死別のかなしみに寄り添い、亡き人を想いながら、心に深く刻まれた絆を感じることができる場所がほしいという願いから生まれました。 店内には、かつて奈良・吉野で樹齢100年を誇った桜の木が、今ではカウンターとして新たな形で生き続けています。毎年花を咲かせていた、木としての命は終えた桜ですが、その存在は触れる人の心に、いつも美しい花を咲かせて

    • 春枕…桜の里

      • 春枕〜宗教によらない命との向き合い方〜

        現代では、わたしもその中のひとりですが、特定の宗教を持たない人が増えています。観光ではなく、お寺や神社に行く機会が少なくなり、伝統的な宗教行事に触れる機会が減少し、命や死について考えることが、日常の中では少々遠いものになっているのではないでしょうか。 どんなに技術が進歩し、生活が便利になっても、誰もがいつか自分の命が終わりを迎え、また大切な人と別れなければならないという現実は避けられないものです。そんな時代の中で、お寺や特定の宗教によらず、もっと身近に、そうした命と向き合う

        • 《春枕のひととき》日にち薬はない

          秋風が少し冷たく感じられる夕方、銀座の古いビルの最上階にある「春枕」に、里奈さんという女性が訪れました。 静かに階段を上り、白い扉を開くと、そこには柔らかな灯りに包まれた空間が広がっています。桜のカウンターの上には、一本のろうそくがそっと灯されています。 扉が閉まる音に気づいた春花が、静かに顔を上げて微笑みます。里奈さんも、穏やかな表情で桜の前に腰を下ろしました。薬草茶を、温かな湯気とともに差し出します。 ふと、里奈さんが口を開きました。 「日にち薬って、聞いたことがあ

        • 固定された記事

        「春枕」とは〜永遠に咲き続ける心の花と絆〜

        マガジン

        • 春枕
          12本
        • 春枕のひととき
          6本

        記事

          《春枕のひととき》西日がつくる道

          銀座の裏通りにひっそりと佇む茶房「春枕」 夕方になると、障子越しに夕日が差し込み、店内には美しい西日がまっすぐに伸びる。その光は、ひとすじの道のようになる。 昔は「西方浄土」という考えがあり、太陽が沈む西の彼方には、亡き人々が安らかに過ごす世界があると信じられていた。 その日も夕方になり、春花(はるか)は西日が差し入るのを見つめていた。その光は、障子を通して一本の道のように伸び、あざやかに店内を照らしている。 そこへ、常連の女性客が静かに入ってきた。 桜の前に座ると、彼

          《春枕のひととき》西日がつくる道

          《春枕のひととき》境界にある鏡

          プロローグ 銀座の裏通りにある小さな茶房「春枕」 階段をのぼり、看板のない白い扉を開けると、すぐ横に大きな鏡が掛けられている。 訪れる人は、みなこの鏡の前を抜けて、店内に足を踏み入れる。薄暗い場所に、ひっそりとたたずむ鏡に、気づくことはほとんどない。しかし、誰もがこの鏡を通り抜けたときから、何かが少しだけ変わる。 過去と今、この世とあの世の境界が、ほんの少しあいまいになり、心の中に眠っていた感情や記憶が、そっと揺れ動くのだ。 ある日、一人の男性が春枕を訪れた。 彼は

          《春枕のひととき》境界にある鏡

          《春枕のひととき》雨音につつまれて

          銀座の路地裏、古びたビルの最上階にある茶房「春枕」。階段をのぼり、その白い扉を開けると、外の喧騒からはなれた静かな空間がひろがる。建物の一番上に位置するため、ここだけが、雨の音をたのしめる秘密の場所となる。 ある雨の日の午後、静かに時がながれていた。障子越しのひかりは淡く、雨音がひびいていた。白い扉が静かに開き、一人の女性が足を踏み入れた。彼女はそっと店内に入り、軽く会釈をする。 春花は、ちいさな声で応え、静かにお茶の準備をはじめた。湯気が立ちあがる中、彼女は雨音に耳を傾

          《春枕のひととき》雨音につつまれて

          《春枕のひととき》心を預ける場所

          プロローグ 銀座の裏通りにひっそりと佇む茶房「春枕」。目立つ看板もなく、古い建物の階段をのぼった先に、ただ白い扉があらわれる。店内には、穏やかで柔らかな時間が流れている。ここは、静かに座っているだけで、心を少しだけ休めることができる場所だ。 第一章:夫を失った女性の訪れ ある日、真奈美(まなみ)は「春枕」の扉をそっとあけた。彼女は数ヶ月前に、最愛の夫を病で失った。二人は長年共に過ごし、お互いを支え合ってきた。夫がいなくなってから、真奈美の心には大きな穴が空いたままだった

          《春枕のひととき》心を預ける場所

          春枕のカウンター③吉野の桜〜託された祈り〜

          春枕のカウンター板には、奈良・吉野で自生していた桜の木が使われています。 吉野の桜は、お花見の対象としてだけではなく、古くから尊いもの、亡き命に捧げるために植えられてきました。そして信仰の証として、深い意味を持ち、神聖な存在として受けつがれ、心に深く刻まれています。 また平安時代の歌人、西行法師がこの地に庵を結び、桜を愛して多くの歌を詠んだことで、吉野の桜はさらに特別な存在となりました。西行の代表的な歌のひとつに、以下のものがあります。 願はくは 花の下にて 春死なむ 

          春枕のカウンター③吉野の桜〜託された祈り〜

          《春枕のひととき》一本のお線香

          プロローグ 銀座の一角、喧騒の中にひっそりと隠れるようにある小さな茶房「春枕」。誰もが気づくことなく通り過ぎるその場所には、古い建物の最上階に続くつづら折りの階段と、看板のない白い扉があるのみ。 「春枕」では、訪れる人が大切な人を偲ぶとき、一本のお線香が焚かれる。そのお線香の煙がゆっくりとのぼり、心の中にある思いをそっと呼び起こす。不思議なことに、そのお線香の煙は、過去と今をつなぎ、訪れた者を「きずなの世界」へと誘うと言われていた。 第一章:大切な弟を失った男性の訪れ

          《春枕のひととき》一本のお線香

          《春枕のひととき》桜の精のみちびき

          プロローグ 銀座の一角にひっそりと佇む、誰もが知ることのない小さな茶房「春枕」。古い建物の最上階にあり、つづら折りの階段を登り切ると、そこには看板もない白い扉が待っている。店内に足を踏み入れると、静寂が訪れた者を包み込むように広がり、どこか時間がゆっくりと流れているような不思議な感覚にとらわれる。 ここ「春枕」には、ただお茶を飲むだけではない、特別な秘密があった。それは桜の精が、訪れる人々の心の中にある花を咲かせ、亡き人との深い絆を再び結びなおしてくれるという言い伝え…

          《春枕のひととき》桜の精のみちびき

          春枕のカウンター②〜割れ目に感じる痛みと愛おしさ〜

          春枕のカウンター板には、「反り止め」という矯正をあえて施していません。 ゆがみや割れは、木が長い年月を生きて、伐られてなお、生命力を持ち続けている証だからです。真っ直ぐであることではなく、その木だけが持つ、唯一無二の傷こそが美しく、そこにこそ価値があると感じています。 この思いは、木だけでなく、人にも通じるものです。誰もが人生の中で、それぞれ異なる道を歩み、傷や困難を抱えながら生きています。その人だけが持っている、過去の傷や痛みこそが、その人をかけがえのない存在にしてくれ

          春枕のカウンター②〜割れ目に感じる痛みと愛おしさ〜

          春枕のカウンター①出会い杢〜桜の木目に宿るふたつの魂〜

          春枕のカウンター板には「出会い杢」と呼ばれる、二つの丸い円が引き合っているような木目が、浮かんでいます。 初めてこの板を目にしたときから、この木目には、何か特別な力が宿っているような、ふたつの魂が引き合うような温かさと強さが感じられました。 もともとこの桜は、長い年月を奈良・吉野山で生きて、花を咲かせてきました。 出会い杢は、一本の木であったときからその内側に秘められており、立ち木としての命を終えた後、板となり、その木目をみせてくれました。 それは命が尽きても、その中

          春枕のカウンター①出会い杢〜桜の木目に宿るふたつの魂〜