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#17「勝利の笑み〜長谷部誠のラストダンス」

昨夜、元日本代表の長谷部誠選手の現役ラストマッチを観戦した。彼が出場したのは後半ATでたったの4分ほど。ボールに触れることなく試合終了のホイッスルがなった。終了の瞬間、カメラは長谷部を映した。その時の表情が忘れられない。試合結果は引き分けだったこともあってか、満面の笑みではない。寂しそうだけど、やりきったかのような小さな笑み。それは間違いなく、”勝利の笑み”だった。

2008年から欧州に渡り、今日までの間、サッカー界の第一線でプレーを続けた。日本代表ではW杯で3大会連続でキャプテンを勤め、日本を引っ張った。そんか彼に私も多大な影響を受けていて、いつからか彼のようにピッチ内外問わず、チームになくてはならない存在でありたいと思うようになっていた。

そんな彼の現役最後の勇姿を画面越しではあるものの、リアルタイムで見ることができたのは私にとって大きなことであった。また一つ、時代の終焉を見たような気がして寂しい気持ちと、スポーツの素晴らしさを再認識する瞬間でもある。この感情は、かつてのシャビがバルセロナを勇退する時のものに近かった。当時高校生の自分は、彼のバルセロナでの最後の試合を目に焼き付けようと必死だった。

カメラがもう一度長谷部を映したのは、二人の子どもたちとハグを交わす父親としての長谷部誠だった。ああ、フットボールは美しい。

中学生の頃に愛読した「心を整える」や、彼との共通点であるMr.Childrenの音楽が好きだということ、同じミッドフィルダーで、プレースタイルも勝手ではあるが似ているなと感じ、いつも彼の姿を目に焼き付けてきた。昨日の試合も、彼のラストマッチでなければ決して観戦することはなかっただろう。中学、高校の頃は大好きなバルセロナのサッカーを毎試合のように早起きしては観戦し、部活の友達と話をしていたけれど、ここ最近はW杯でもない限りサッカーを観戦することはめっきりなくなっていた。魅力を感じなくなったわけではないけれども、なぜか観戦しようとしなくなったのである。たまたまテレビをつけて試合が行われていれば見る気にはなるが、本当にそれくらいである。

後半途中からの観戦ではあったものの、ブンデスリーグのスピード感や球際の攻防には思わず声を漏らす場面が何度もあった。サッカーってこんなにおもしろかったっけ。久しぶりに高校生の頃に戻ったような気持ちでサッカー観戦をしていて、長谷部が出てくるのを今か今かと心待ちにしていた。後半アディショナルタイムに入った最後の最後に彼がユニフォームを来てピッチラインに立つ姿やピッチに入った時の大歓声。

イチサッカーファンとして画面を見つめる子どもの目をした自分がいたことに気づいたのは、視聴していたiPadの電源を落とし、部屋の電気を消して布団に入ったあと、目を瞑った瞬間だった。ふと小さな笑みがこぼれた。

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