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#86「優勝」
優勝を経験した記憶はほとんどない人生だった。思い出せるのは、小学4年生の頃、地域の大会で優勝したこと。自分がダメ押しの3点目を決めたことと、表彰式終わりにコーチが嬉しそうにチーム関係者へ連絡をしにいく姿が印象に残っている。
今日、トーナメント決勝戦で勝利し、優勝することができた。プロのような華やかなカテゴリーではないので、安っぽいトロフィーと典型的な賞状をもらったが、それ以上に優勝したという事実が嬉しかった。
10時キックオフのこの試合、今週もスタメンで出場することができ、後半の引水タイム(つまり後半半分)まで出場した。チャンスメイカーとして決定機を演出することができ、2点目のPK獲得に繋がるラストパスや、3点目ではクロスからの味方のゴールでアシストを記録するなど、結果でも貢献することができた。
また、この試合ではチームメイトの両親で、小学生の頃のコーチも応援に来てくれていて、自分のアシストからそのチームメイトが決めてくれたシーンがあった。彼とは6学年違っていて、普通だったら一緒に試合に出ることなんて考えられなかったが、こうして同じピッチに立ち、ゴールを喜び合うことができた。それを当時お世話になった人たちにも魅せることができ、個人的にはグッとくるものがあった。異常なくらい暑い中での試合だったけれど、応援に駆けつけてくれたたくさんのひとたちのお陰で、最後まで走り切ることができた。本当に感謝しかない。
この年齢になっても熱くボールを蹴っているなんて想像つかなかったのに、優勝することができるなんてもっと想像することなんてできなかった。優勝のホイッスルをベンチで聴き、チームメイトやサポーターと共に喜びを分け合う。みんなで叫び、監督を胴上げする。そこには夢で描いたような素晴らしい光景が広がっていた。誰もがこの光景を手にすることができるわけではない。だからこそ、目の前に広がる一瞬一瞬の景色が尊くて、光り輝いて見えた。
それにしても、勝利した後の時間は本当に最高だった。ずっと気分が良くて、最高の週末を過ごすことができた。このnoteを執筆している今もまだ興奮が冷めていないが、明日からまた仕事が待っているので、今日は余韻に浸りながらゆっくり眠ろうと思う。この切り替えこそ、社会人サッカーの醍醐味だ。
最後に、先日観たキングダムの映画で、王騎将軍が「これだから乱世は面白い」と笑みを浮かべていたシーンについて語りたい。死と隣り合わせの絶体絶命のシーンで、笑みを浮かべながらも力強く言ったこのセリフのシーンがとても印象的だったことを覚えている。それは、今の私の境遇に通ずるからなのかもしれない。社会人サッカーは、たくさんのものを犠牲にしている。サッカーをしなくてもいいのに、サッカーの優先度を上げるために、仕事やプライベートの時間を犠牲にしてまで取り組んでいる。だからこそ迷いは常にある。それでも続けているのは、サッカーが楽しくて、普段の生活では味わえない最高の瞬間を味わうことができるから。ここまでフットボールを続けてきて、本当に良かった。辞めたいと思った時間が多ければ多いほど、最高の勝利の嬉しさは格別なのだ。
これだからフットボールは面白い。