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21キロ走る仕事:LRTに乗って飛山城史跡公園散歩
「狼煙」ってオオカミのフンを使っていたからこの漢字だってご存知ですか?
秋も深まるころ、栃木県宇都宮市の路面電車ライトラインに乗車して、マイナースポット「飛山城史跡公園」へと足を運びました。そこで狼煙について少々学んだのですが、なかなか興味深かったので書いてみます。
LRTライトライン乗車
ライトラインは2023年夏に開通した、宇都宮の駅東地区から芳賀を結ぶ新交通システム、路面電車です。こちら私が学生の頃からずっと計画されていて、「一体いつ実現するんだろう」とサグラダファミリアを見るような気持ちで見守って来たのですが、先に開通して良かったです。
用もないのに無駄に何回か乗りました。未来の乗り物!といった外観で格好良くて気に入ってます。
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さて用もなく、と書きましたが・・・こちら、用がないと本当に乗る機会がないんですよ。通勤・通学以外で大抵の市民には芳賀方面に用事は生まれないと言って過言ではないでしょう。
ということで無理に用事を作ってみました。途中駅の最寄りにある「飛山城史跡公園」を散歩してみます。ちなみに駅からはそこそこ歩きます。農地と住宅街をとぼとぼ進み、大丈夫かと心細くなったあたりで辿り着きます。
宇都宮駅からライトラインで約20分、そこから更に徒歩20分をかけて行く価値があるのか?と問われれば、よほどの城好きでなければオススメはしにくいです。駅に広告ポスター貼るなら、もう少しアクセスをなんとかした方がよさそうですね。ただ行ったら行ったで案外楽しめました。
烽と書いてトブヒ
飛山城には、狼煙や火を上げるための施設「|烽⦅とぶひ⦆」というものがあったそうです。公園の真ん中あたり、古代竪穴建物がその烽を管理する番人の詰所であったようです。
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飛ぶ火、とも書くそうです。なるほど火が飛んでますものね。それが時を経てのろしと呼ぶようになったそうですが、なぜ漢字で狼煙と書くのか私は今回はじめて知りました。オオカミの糞を使っていたからだそうです。
オオカミの糞は、まっすぐ煙が登るため使い勝手が良かったそうです。しかし日本ではオオカミの糞は簡単に手に入らないので、藁とか杉の葉などを代用したとのことです。
それにしても、なんでオオカミの糞がいいって気づいたんでしょうね。色々燃やしてみて試したんでしょうか。
これはシカの糞、これは犬の糞、これは鳥の糞・・・
あ!オオカミが一番いいじゃん!
という現場が過去世界のどこかで生まれたということでしょうか。非常にシュールです。
暇なのか、激務なのか
その烽の番人たちの仕事内容が歴史体験館にて紹介されていたのですが、なかなか面白かったです。「軍法令」という軍人や国防などの規定によると、1つの烽家には2人1組を2組、計4人で管理すること、40里(約21キロ)ごとに設置してリレーで火や煙を上げるなどと細かく決まりごとがあったようです。
しかしそんな緊急事態なんぞそう頻繁に起こるものではないそうで、基本は設備管理や火種づくりなどを行なっていたようです。
なんか暇そうな仕事だな・・・と思った次に、とんでもないことが書いてありました。
「次の烽家が狼煙をあげていなかった時、走って知らせにいく」
なんですと?21キロを??
これが大雨だったとか天候のせいで見えなかったとかなら仕方ありません。不可抗力です。しかしハーフマラソン分を必死に走り、ようやく辿り着いたら相手が「油断してうたた寝しちゃって見逃してました」とかだったら殺意すら湧きますよ。
道だって今のように舗装されていないはず。靴だってランニングシューズなどあるはずもございません。昔の人は本当に健脚です。駅から20分歩いた程度でブツクサ言って本当に申し訳ございません、という気持ちです。
先ほど「暇そう」と書いてしまったのですが、いざという時21キロを走れるよう、筋トレや走り込みをしていたのかもしれないな・・・などと思いを馳せてみました。
飛山城史跡公園には見応えのある歴史体験館が併設されており、なんと入館無料です。お天気のいい日に散歩するとなかなか清々しい気持ちになれる公園ですので、ぜひLRTライトラインに乗って足を運んでみてはいかがでしょうか。
■豆知識■
ライトラインの停留所「飛山城跡停留所」の副停留所名「アキモ前」は、地元の漬物の会社が命名権を購入して付けたそうです。