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哲学的ゾンビと働き方改革の奇妙な関係

ゾンビが苦手になったのは高校生の頃でした。

友人の家でゲーム『バイオハザード』をやっていたとき。壁からゾンビの手が急にでてきて、驚きのあまりコントローラーを投げ捨て、リアルに壁に穴をあけて以来、ゾンビが大の苦手になりました。

富士急の戦慄迷宮のゾンビも、映画にでてくるゾンビも嫌いです。

さてさて、今回取り上げるのは哲学的ゾンビ。わたしの嫌いなゾンビの中でも唯一興味関心を持てた愛すべきゾンビ。そんな哲学的ゾンビについて今回はエントリーしたいと思います。

哲学的ゾンビとは

哲学的ゾンビとは、オーストラリアの哲学者David John Chalmersが好む思考実験でよく使われる言葉です。本noteでは、私が偏愛してやまない哲学作家であり経営者でもある飲茶氏の新著『体験の哲学』の説明がわかりやすかったので、一部引用します。

みなさん、過去に『あれ?今日あっという間に一日が終わったな。何仕事したっけ?』みたいな経験したことありませんか?

日常生活でも、『あれ、家の鍵かけたっけ?』『そういえば今日の帰り道ってどんなだったっけ?気づいたら家にいたな。』みたいな経験もしたことありませんか?

飲茶さんの言葉を借りると、

時間が消し飛んだかのような「気がついたら○○が終わっていた」「○○をしたかどうか覚えていない」といった不思議な現象があなたの身に起きるのです。
なぜそんなことが起きるのか?
その答えは端的に言えば「どうでもいいから」。人間には「どうでもいい情報、感覚は、無視してなかったことにする」という機能があるからです。
(中略)
あなたの人生の大半が、足の裏の感触のように、耳鳴りのように、「どうでもいい感覚」となって意識にのぼることなく通り過ぎていき…
(中略)
この症状が極端に進んだ状態が「体験がない状態」、すなわち本書で言う「生きていない状態」です。実はこの状態のような、
身体は習慣通り日常生活を営んでいるが、内面的には何も感じていない人間(意識に注目すべき対象がなく、なんの感覚も受け取っていない人間)』のことを哲学の世界では「哲学的ゾンビ」と呼びます。
引用:体験の哲学 飲茶著 p42-48

との解説してくださっています。

この哲学的ゾンビは職場にも時折発生します。このあたりを少し掘り下げていってみようと思います。


働きがいと働きやすさの奇妙な関係

あれれ、でも日本って働き方改革が進んで、昔より労働環境良くなったんじゃないの?ゾンビ発生しないよね?みたいな話があると思います。

現にOpenWorkで定期的に発表している残業時間推移も、下図にあるとおり見事に減少しているんです。

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出典:日本の残業時間 定点観測 2021年4月15日 OpenWork発表

確かに日本の労働環境は改善されているのかもしれません。ただ、働きやすさと働きがいはイコールではないんですよね。

下の図を見てください。

画像2

出所:日経ビジネス 働き方改革と働きがいの不都合な関係、若手が求める成長環境とはの中で紹介されている、クレジット・プライシング・コーポレーション(CPC)のアナリスト西家宏典氏が作成した図表

この図は、OpenWorkに投稿されたクチコミをテキストマイニングにより、働きがい・働きやすさとして数値化することに成功し、経年で日本の働きがい・働きやすさがどのように変化してきたかを示した図表となります。

驚きなのは、働きやすさのスコアは改善されている一方で、働きがいはこの10年で下落の一途であるということ。

働きやすさが改善されても、働きがいは改善されない(因果はさておき、むしろ悪化する)ということが分かりました。

あなたの職場でも、働きがいを一切感じることがなく、心を無にしたまま1日が終わる哲学的ゾンビが増えているのかもしれません。これはなぜなのでしょうか?

働き方改革と哲学的ゾンビの奇妙な関係

(ここからは考察がメインとなりますので、一つの意見として読んでもらえると幸いです。)

若い方は知らないかもしれませんが、昔こんなキャッチコピーのCMがありました。(思い出しながら、それっぽいのを自作しました)

二十四時間 戦えますか?

とある栄養ドリンクのキャッチコピーなんですが、今だと速攻クレームが寄せられるキャッチコピーですよねw

でもそれだけ猛烈に働いていた時代は割と最近まであって、その圧倒的量をこなす中で能力が上がっていき自分の仕事の働きがいを見出していた人や、自分の天職やパーパスに出会えた人もいたのかもしれません。(長時間労働を支持しているわけではないので悪しからず)

何が言いたいかというと、これまではそういった労働環境が偶然、個人が働きがいに出会う機会を作っていたけど、労働環境が改善された今、圧倒的な仕事量が働きがいを生むというのは起きにくくなっている。

労働環境を改善していくには、業務の効率化が必要だし、分業化もきっと進んでいく。すると、自分の仕事を機械的にこなす人は増えていき、気づいたら仕事が終わってた…みたいな哲学的ゾンビがどんどん増えていくのではないでしょうか。

働き方改革が進んでいく中で、これまでの偶然働きがいを得られる構造はなくなり、能動的に見つける・感じることが必要になっていくのではないでしょうか?仕事や会社を自分の意志で決めないと、働きがいは向こうからはやってこない時代。どうせ働くなら、哲学的ゾンビになるよりも、楽しく働けたらいいですよね。あと、労働時間が長かったから働きがいがあった、なんてのは絶対言いたくないですし…

(ちなみに、働きがいが高いと、1-3年遅れで会社の業績や株価に好影響を及ぼすことが研究で証明されています。)

まとめ

いかがでしたか?飲茶さんの新書を読んで考えさせられることが多く、今回エントリーしてみました。

’働く’を変えていきたい、ジョブマーケットの変革にチャレンジしたいという方、OpenWorkにて絶賛採用中ですので、是非お話聞きにきてください!


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