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「ファン」という存在
ガチ恋って何だろうという記事を書いたが、
「ファン」という存在
もなんとも難しい存在だなぁと思っている
個人的には、公式が発しているルールさえ守っていれば、
あとは好きという気持ちを持っている人全て
ファンと位置づけられるとは思っているのだけれども。
・・・勿論どんなアーティストやクリエイター
俳優であれ、お金を落としてもらわねば困るので、
好きという気持ちだけでお金を払う人が一人もいなければ、
活動はなりたたないし、
お金をかけてる人ほど支えているとも思うんだけど、
今回はいったん横に置く。
先日久しぶりにあるアーティストのライブに足を運んだ。
とはいえ、この状況下でめっきりライブへ行くことは減っていて
正直いろんなアーティストに対する熱量も下がっていたので、
わくわく感も特になく、久しぶりに見ておこうかな
というくらいの気持ちだった。
それでも久しぶりのライブ空間。
周りの期待感も必然伝わってくる。
SEが始まる。もともと、このアーティストは
SE中にメンバーを手拍子で迎えるのが常だった。
メンバーを呼べなくなった今、
より一層大きな手拍子で私たちは彼らを迎える。
そして始まるライブ。
いつもと変わらない空間、・・・のはずだった。
私はボーカルの方のファンだったのだが、
なんとなく苦しそうである。
・・・今日は調子が悪いのかもしれない。
長く見続けていれば、調子が悪い日もある。
これまでもそうだった。
うまく高音があたらないとか、声が少し調子悪そうとか、
そういうライブも何度か見てきた。
けれどこの日は桁違いだった。
高い音域が出ないとかじゃない。
マイクの音量はきっとかなり上げていたのだと思う、
それでも声が拾えてない時があった。
Aメロ最初歌っては、すぐに歌を止めてしまう曲もあった。
楽器隊の音だけが会場に鳴り響く。
時々思い出したようにきれいな声で歌ってくれるのだけれど、
本編も後半になるにつれどんどん、
声が聞こえる時間が短くなっていく。
マイクを持ったままうつむいてしまう場面もあった。
それでも彼はフロント。彼を中心にライブは続く。
普段なら曲中にヘドバンやモッシュをするファンもたくさんいるけれど
この状況下では会場内でそういった行為はゆるされてない。
そして声援を出すことも出来ない。
私たちにゆるされているのは拍手や手拍子だけ。
みんなの視線は、どうしようもないほど
うつむいた彼へと向けられてしまう。
当然メンバーも異変に気付いている。
普段ならあまりやらない煽りを楽器隊のみんながしたり、
ボーカルの彼に寄り添ったりしていた。
けれど歌えない時間はながくなっていき
彼の声は復活しないまま、本編が終わってしまった。
・・・もうここで終えてほしいと思った。
アンコールが出来る状態じゃないのは誰の目からも明らかだった。
どうかゆっくり休んでほしい。そう思った。
そう思っていた人もきっと沢山いると思う。
けれど自然に起こるアンコールの手拍子を誰もとめなかった。
それはたぶん、いろんな思いが混ざっていたんだと思う。
ステージの上では明らかにアンコールの準備がなされている。
そうなっている以上ここで手拍子をしないのは失礼になってしまう。
ボーカルのパフォーマンスとしては不十分だったかもしれないけれど、
バンドという意味ではとても素敵なライブだったと思う。
それに対しては私も拍手を送りたかった。
どうするんだろう・・・
長い長い、いつもよりずっと長い時間客電は落ちたまま、
手拍子は鳴り響いていた。
結局アンコールに彼らは全員で出てきた。
そして1曲目、彼は歌い切った。
けれどやはり2曲目3曲目とまた歌うことが出来なくなってしまった。
アンコールはたぶん、歌っていた時間の方が少ないだろう。
明らかに悔しがっている姿、そして歌えない自分を責めている姿。
見ていて痛々しかった。
そんなに責めなくていいのに、大丈夫なのに。
そう思っても何も出来ない。
いつもラストはvocalの彼が残り、来てくれた皆にお礼を言っていたのに
後奏を待つことなく、誰よりも早く彼はステージから姿を消した。
去り際手を合わせて謝罪をしながら袖にはけていく彼。
初めて見た光景だった。
酷いパフォーマンスだったと責める人はたぶんいるだろう。
歌えていないのだから、当然である。
責めるファンがいてもそれは間違っていないと思う。
でもたぶん、昨日の拍手の音や周りの空気感から感じ取る限りでは
あの空間にいるファンのほとんどがボーカルの彼の応援をしていた。
それは「声が出るように頑張れ」とかではない。
ただみんなが大丈夫だよ。そう言っているように思えた。
きっと声を出せるライブだったら、
彼を助けて曲中もみんなが歌っただろう。
アンコールが終わってメンバーがすべてはけた後も、
拍手はずっとなりやまなかった。
こんなに長い拍手はきいたことがない。
ただただ会場にいるファン全員で彼らに想いを届けていた。
終演を告げるアナウンスすらも私たちの耳にははいっていなかった。
その日のパフォーマンスにただただ心からの拍手を送った。
凄いことだと思った。
チケット代は安くないものである。
手数料を合わせれば8000円を超える。
ライブハウスはドリンク代も支払うので、交通費なんかも合わせれば
恐らく多くの人が10,000円以上払ってライブを見に来ている。
遠方から来ている人はもっとだろう。
vocalである彼の声を彼の歌を聞きに来た
そんな人だって沢山いると思う。
心中は勿論わからないけれど、それでも少なくとも
私の周りの人たちは安くないお金を払って参加した
この不完全なライブに強く拍手を送り続けていた。
途中で会場を後にする人は誰もいなかった。
そこまでさせるのは、やはり彼らへの想いに
他ならないのだろうと思う。
会場にいる人たちの強さとやさしさをしみじみと感じた。
沢山の人たちの声に出せない、物理的に見えない想いを
感じられたように思った。
あの空間にいられたことをすごくうれしく思う。
どうか早く良くなりますように。
世界で一つ彼にしか出せない声が、
早く彼のもとにもどってきますように。
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