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嗅覚過敏への対処法

以前書いた聴覚過敏に続いて、「におい」への過敏さ(=嗅覚過敏)への対処法について書いた記事です。感覚過敏で困っている方やそのご家族・支援者の皆さまに読んでいただければ幸いです。

嗅覚過敏とは

文字通り、におい(匂い/臭い)に対して敏感な状態を指します。

苦手な匂いは、食べ物や香水、消毒液、柔軟剤など人によって様々です。

また、特定のにおいには非常に過敏でも、他のタイプのにおいにはむしろ気づきにくいという方もいるため、状態像は多様です。

「嗅覚過敏」は医学的な診断名ではありませんが、嗅覚の過敏さは、日常生活における参加の妨げにつながります。

過敏さのある方を支援する場面では、以下のような語りが頻繁に聞かれます。

人混みの匂いが苦手で満員電車に乗ると気分が悪くなる

理科室の匂いが苦手で部屋に入れない

匂いのせいで食べられるものが限られている

お子さまだけでなく、大人の方でも嗅覚過敏が理由で特定の場所にいることが難しかったり、活動参加に支障をきたしたりすることがあります。

この記事では、嗅覚過敏への対処法について簡単にまとめたいと思います。

嗅覚過敏の原因

嗅覚の過敏さは様々な理由で生じることがあります。詳しいメカニズムは不明な点が多いのですが、過敏の発生頻度が高い状況や疾患については一定の知見があります。

前提として、感じ方には個人差があるため、人によって敏感な人も鈍感な人もいます。過敏であることが悪いわけでは決してありません。この記事では、あくまで過敏で「困っている」方を想定読者としていることをご理解ください。

まず、環境の変化によって感じ方が変わることがあります。例えば、精神的なストレスでも過敏さが出現することがあります。

病気や障害が原因となる場合もあります。私の専門である自閉スペクトラム症の当事者の方は、嗅覚過敏に困っている方が多く、対処法について尋ねられることがあります。

他にも、妊娠中はにおいに敏感になるケースが報告されています。また、何らかの病気(例:てんかん、副腎不全など)が隠れている場合もあります。

特に急激な変化がある場合や生活に大きな支障をきたす場合は、必ず医師に相談してください。

対処法

ここからは、具体的な対処方法について説明します。

においから距離をとる

物理的ににおいの発生源から距離を取ることができれば、当然ですが苦手な刺激に触れることはなくなります。

例えば「昼食時にはオフィスや教室ではなく、別室や外に移動する」など、苦手なにおいが発生する時間のみ、その場から離れるように工夫するのが一つの方法です。

公共交通機関であれば、混み合う時間をずらして移動する、混みにくい車両を把握しておくなどの工夫が助けになるかもしれません。

その場から離れることが難しい場面も多いと思いますが、大人の場合は自分でコントロールできる範囲で行えると良いと思います。お子さまの場合、状況によっては合理的配慮として対応することも一案です。

まずはどのようなにおいが苦手なのか、それはどのような場所や時間で発生するものなのかを理解することが大切です。

においを防ぐ

においは目に見えず、他の感覚刺激と比べても防ぐのが難しい過敏さの一つです。とはいえ、対処法はあります。

代表的な方法の一つがマスクをすることです。においは空気を媒質として伝わるものなので、マスクによって多少防ぐことが可能です。コロナ禍でマスクをする機会が増えたことで、季節や人混みのにおいを感じにくくなったと実感された方も多いのではないでしょうか。

しかし、マスクでは不十分な方も多いと思います。その場合は、マスクに加えて飴を舐めたりガムを噛んだりすることを試してみてください。

口腔は鼻腔に繋がっているので、飴やガムのにおいで鼻腔内が満たされて、苦手なにおいを防ぎやすくなります。

ASD者の嗅覚の研究者である熊崎先生は、論文でこれらの方法が効果的な可能性について述べています。

嗅頭経由で嗅覚受容体に辿り着く香りは湿度が高いため浸透圧が高い。従ってガムを噛む、飴を舐めることでにおいをブロックする方法も有効な可能性がある。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jseip/4/1/4_25/_pdf/-char/ja

他にも、好きな香水や柔軟剤を使ったタオルやハンカチを持ち歩き、苦手なにおいのある場面では鼻と口を軽く覆う方法もあります。これもマスクと似たような効果ですが、飴やガムと同じく別のにおいでマスキングすることができます。

最後に

嗅覚は他の感覚に比べても対処が難しいと感じています。
記載した対処法も「なるべく苦手な刺激から距離をとりつつ、防ぐために道具を使う」という、一般的な方法です。

ウルトラC的な解決策がないのは専門家としても悔しいところですが、ご自身やお子さまの過敏さを理解した上で、できる対処から試してみてください。

この記事で少しでも困りが減ることを願っております。

参考文献

熊崎博一, 自閉スペクトラム症の嗅覚特性に着目する意義. 2019(1).Vol 4 予防精神医学. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jseip/4/1/4_25/_pdf/-char/ja

著者監修コラム: 教室のにおいで集中できない!?嗅覚や味覚が過敏で学習困難に?原因や学校での対応策などイラストつきで解説【専門家監修】


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Haruka Noda
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