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「もう無理です」と言えた日

2020/5/30  

「あなたはいつも卒なく仕事をこなすから、少しくらいは苦労したほうがいいよ」 

さっきまで笑顔で会話してたわたしの心にヒビが入ったような音がした。  

こんなにも毎日辛いと思って生きているのに、これ以上苦労しなきゃいけないのか?

 その場では、卒なく仕事をこなすことに笑顔で否定した。

「わたし、仕事場からお家に帰るときに毎日、自分はなんて仕事ができない人間なんだ〜って思って帰ってます。」と言ったら、その場にいたみんなが驚きの表情を見せた。 

自己認識と他者認識が明らかに乖離していると理解できる出来事だった。でも、その時のわたしはこんなにも周りは理解しないものなんだとしか感じれなかった。 

翌日、わたしはついにキャパオーバーした。

 こなしてもこなしても終わりがないルーティンの仕事。期待されて任された新しい仕事。イレギュラーで降ってくる仕事。後輩の仕事の後片付け。日程調整。どんどんくるメールと電話。そしてまわりのご機嫌とり。その時はちょうど上司の仕事のミスを、そのもっと上の上司に指摘され、どう解決していけばいいか考えてほしいと言われた。その案件は複数人が絡んでいて、ひとつの修正に膨大な仕事量が予測された。自分の持ってる仕事すらまだ進んでいない。 

その日は週末の土曜日だった。1つの仕事の納品は火曜。今日まで締め切りの仕事も山ほど。日月休みのわたしの職場として、今日中に全て終わらそうと思ったら、物理的に不可能だと認識した。

 「あ、無理だ。」 

詰んだ。って言葉がこんなにも当てはまる状況は過去にもなかった。終電までやって休日出勤してもどうにもならない量と確認作業になりそうだった。今日だけでなく、かれこれずっとそうだった。 

心が、もう、無理だった。仕事云々も無理だったけど、もう、笑顔でこなすのが無理だった。

 「もう無理だ」と心が認定した瞬間、人が大勢いる職場の真ん中で、滝のように涙を流した。

 あぁ、こんなところで泣いちゃだめだってトイレに駆け込んだ。 トイレに入ってからも涙は止まらなかった。個室が2個しかないのに1個占領しちゃってごめんなさいって思いながら、30分以上泣いた。 

皮肉にも、時間はどんどん進むが、仕事は山のように待ってる。どんなことがあってもこなさなきゃ、でもわたしはこうなったからヘルプを呼ばないとと思った。 

とりあえず、涙を堪えて、ヘルプを呼ぶことにした。トイレから出る。面倒見の良い同じチームの別ラインにいる奥様に、話を聞いてもらおうと思った。たぶん、もう、声をかけたときには泣いてたと思う。 

 「あの、もう、無理です。」 

 言えた。 泣いてるわたしを見て、これはただ事じゃないと察してくれた。「もう、無理です。」最初はこれしか言えなかった。何が無理なの?って聞かれても、とにかく、「無理です」と言うことしかできなかった。 別の場所に移動して、ひとつひとつ、無理を語った。

たくさん仕事持っててこなしきれないこと。上司のミスを上司に直接言える勇気がないこと。その対応をどうすればいいのかわかんないこと。やれてないことが多すぎて多すぎて、もう手に負えないこと。そして、もう、心が保てないこと。

 場所が変わっても、人は通る場所。気づいた人がそっと集まり、この状況をどうにかして協力しようとしてくれた。 わたしが仕事がこなせなくて困ってるなんて、みんなわからなかったと驚いてた。

まず、自分の持ってる仕事をみんなに伝えた。事前に紙に書き出してたTodoリストを見せた。全然こなせてないと思ってたけど、みんなから、この仕事量は多いね、っていわれ、自分自身も、これは多いのか、と客観的に認識できた。

 そして、すぐに仕事をひとつひとつ降ろしてくれた。ありがたかった。 単に自分が背負いすぎていただけだった。降ろすといっても何だかんだ引き継ぎもしないといけないので、仕事は増えたり減ったりした。 

振り返って、この状況のあとでも、ひとつも仕事を取りこぼさず、逃げ出さず、危険信号を出せたことを、本当に偉いと思う。 気持ちはもう限界だったけど、やるべきことはちゃんとやれた自分を褒めたい。 

でも、戦いはこれから始まるのだった。一旦限界をむかえた心を修復するにはたくさんの時間とたくさんの人の協力が必要だった。でも、それはそれでわたしが昔から持ってた少しいびつだった心を修正するには必要な大切な時間だった。 


後日談 

キャパオーバーした日から丁度1年が経って、やっと公開しようかと思えるようになりました。 いまはだいぶ心が安定して、振り返れるかなぁと。 自分の仕事は愛してるので、職場の批判はご遠慮ください。これからこの1年あった、心の動きを言葉にできたらいいのかなと思います。気長にお待ちくだれ!

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