サイレント・ネオ 月歌に降り立つ1-サイレント・ネオ-boy meets girl-
一方、シェルのパイロットは「うわあああ…」と恐怖の叫びをあげて、見境もなく実験機に突撃した。
「化け物、くだばれぇええ!」
パイロットが叫んだ次の瞬間…上空のサークルは明滅し、一斉にまばゆい光のレーザーを放った。
その光は実験機に向かっていたシェルに集中し、一瞬でこの世から消し去ってしまった。
1
地球で戦闘に明け暮れたムサシは、月歌に到着しても無意識に戦を求めて、3都をさまよった。しかし、結局仕官は不首尾に終わり、はっと目が覚めた。ムサシは師匠であるマスター・スウゲンの言葉を思い出し、戦いから距離を置くことにしたのだ。
そんな折、偶然にもリムリを訪れていたムサシは、たまたま国境にある村の近くを通りかかったていた。すると、村のあちこちで炎があがるのを目撃した。
銃声と悲鳴が交錯する中、思わずムサシはトレーラーから転げるように外に出た。
苦い経験がよみがえる-地球(テラ)のネオ東京で起きた内戦の記憶だ。
その時、ムサシはまだ幼かったが、戦火の中で逃げ惑う民衆の中にいた。内戦はわずか数ヶ月で収まったが、その時に目にし、耳にした人々の悲鳴は今でもはっきりと覚えていた。
「俺は…ここに戦うためにきたわけじゃない…」
ムサシは自分に言い聞かせるようにつぶやき、トレーラーの扉を開けて車に戻ろうとした。
しかし、轟音がとどろき、悲鳴が再び聞こえると、ムサシは思わず舌打ちした。
「俺には関係ない…俺はもう戦うことに疲れたんだ」
だが、そんな言葉とは裏腹に、ムサシはコンテナを開けると、サイレント・ネオの頭部にあるコクピットに無意識に乗り込んでいた。
「やっかいごとはごめんなんだけれどな…しかし、ここでもか…」
ムサシは逃げ惑う人々の姿を思わずフラッシュバックさせると、血がぞわっとたぎるのを感じた。
「相棒…頼むぜ…」
ムサシがのるサイレント・ネオの目が閃光をあげるように光り、まるで命が吹きこまれたかのように動き出した。
サイレント・ネオ-boy meets girl-(サイレント・ネオ 月歌に降り立つ・全8話・先行配信中)
BGM
-登場人物-
テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?
ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機落としを達成、スーパーエースに認定された。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。
ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。
ムドー:月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。
マギー教授(おねえ)とみなみちゃん(アイドル):一年前に地球(テラ)から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。