私はついに力尽き、降伏した!-ジャック・ソック覚書-サイレント ネオ-異聞-
-ジャック ソックは"ほらふき"さ。彼の言葉の半分は"ほら"でできている-
メルセデウス19世(ルカ・メルセデウス)
-私は彼ほど真剣な顔で"ほら"をふける人間に出会ったことがない-
デニ・オム斥候隊 隊長
-みなさんがおっしゃるように彼は軍人として優秀ではありません。でも、確かに彼は何かがあるんです。
そうでもなければ、地球とコロニーで捕虜となって、再び月歌に戻ってこれるなんて誰も思いはしませんよ!-
ジャック・ソック夫人
いったい我々はどうなるのであろうか……みな、伏し目がちで、会話はあまりない。陽気なグアテマン曹長でさえ、ろくに話もしなかった。
なぜなら、我々の運命は、敵対していた地球人が完全に握っているのだ。そう、我々は捕虜となってしまったのである。母国の人々にも、合わせる顔がない…そんな思いも、誰もが持っていたはずだ。
しかし、我々は最後まで戦ったメンバーであり、どうすることもできずに降伏したのだから、名誉ある降伏なのだ!
我々は地球・月歌大戦において粘りに粘ったのである。
多くのCAや戦艦が墜とされ、一部は撤退していた。それでもなお、ゴメス大佐の艦隊により、抵抗を続けたものたちなのだ。
戦争が終わるころ、ほとんどの月歌の兵は戦死してしまい、壊滅的な敗北を喫したのである。
我々、斥候隊はシャローン提督の傘下にあったが、終盤には散り散りになってしまった。
デニ・オム隊長の行方はしれず、私は配下である2人の兵士と共にあるだけだったのだ。
その2人の兵士も敵に墜とされ、私はついに1人になった。
愛機である偵察型エクスぺリオンは、シャローン提督から賜った名誉あるCAだった。
この愛機をあやつり、私は2機・・・いや、3機ほどの地球のCAを撃墜した。
そして、何とか殿軍として支えているゴメス艦隊にたどりついたのである。
しかし、私が到着した時はすでに万事休すで、ゴメス艦隊の勇猛なCA隊20数機が、目の前に展開する地球の大軍に特攻をしかけていた。
私も参加すると主張するも、偵察機の私には他に任務があると指示を受けた。
すなわち後方にいるとされるシャローン様の親衛隊に、救援を求めるよう指示を受けたのだった。
指示を受けた私は親衛隊のいる方に飛び立ったが、すでに部隊は消滅していたのである。
万事休す! 敵に囲まれた私はちぎってはなげ、投げてはちぎった。しかし、無念! エネルギーも尽きて動かなくなり、ついに私は降伏したのだった。