テディ・Dと実験機8-サイレント・ネオ-boy meets girl-
「我が名はムドー・アルシュタイン! シュトライツァーと義兄弟の契りを結び、北国最強と呼ばれた騎士。名のあるパイロットとお見受けいたす。騎士の習い、命のやり取りの前に、どうぞ名を名乗られい! 」
月歌の士道にのっとり、一騎打ちを挑むムドーはオープンチャネルから呼びかけた。
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しかし、騎士の習いも知らず、興味もないテディ・Dは、何も言わないどころか、いきなり仕掛けた。テディ・Dは一騎打ちの流儀である近接武器での果し合いという暗黙のルールを無視し(というか知らなかった)、手のひらからビーム光線を発射させた。
「な、なんと…貴様は一騎打ちの作法を無視するというのか!?」
ムドーは紙一重へ、横運動で凄まじいスピードの光線をかわし、怒りで歯をぎりぎりさせた。さすがムドーというべきで、実験機とシェルとの戦いから、攻撃パターンを頭に入れていたのだ。光線は下から上に曲線を描きながら、夜空の方に消えて行った。
「腕はすさまじいが、貴様のようなやつのことを騎士の風上にもおけぬというのだ!」
ムドーは腰部にしまわれているレーザーライフルを左腕で抜くと、もはや果し合いは無効だとばかりに、トリガーを引いた。
赤白いレーザービームが、実験機に一直線に向かう。実験機はわずかにバーニアを稼働させ、ふわりと浮かんでそれをかわした。
しかし、それを読んでいたムドーはその間に間合いを詰めており、右に手にしていたレーザーサーベルで、実験機が着地するのを見定めて横一閃に切りかかる。
すると、その動きをさらに読んでいたデティ・Dは身を屈めるようにして攻撃をかわし、両機はすれ違った。
高機動パンツァーはすぐさま旋回して向き直る。
だが、テディ・Dは実験機を立ち上がらせ、それより早く強引に反転させて、ムドーのパンツァーに突進していた。
そして、近距離で右手のひらをかざし、ビーム光線を浴びせた。
不意をつかれたムドーは、素早く左肩にあるシールドで防御を試みるも、一瞬で切り替え、上体を目いっぱいにそらして光線をかろうじて回避した。
光線に撃ち抜かれた盾は一瞬で夏のアイスのように溶けてなくなり、ムドーの乗るCAは勢い余って地面に倒れてしまった。
サイレント・ネオ-boy meets girl-(テディ・Dと実験機全10話・先行配信中)
BGM
-登場人物-
テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?
ムドー:月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。
ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機落としを達成、スーパーエースに認定された。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。
ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。
マギー教授(おねえ)とみなみちゃん(アイドル):一年前に地球(テラ)から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。